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相戸 晴子(あいとはるこ)さん (2008年2月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

NPO法人子育て市民活動サポートWill 代表理事/ 宮崎国際大学教育学部 専任講師

 

 

公園での発足式

 子育てネットワークを設立するきっかけとなったのは、自身の子育てへの不安や地域の子育て情報の少なさを実感したからだった。核家族・転勤族で初めての子育て。「家の中にこもっていてもだめ、外に出よう」と思ったものの、「公園に行っても誰もいない。図書館なんかは子どもが泣くので行けないし。子連れで行ける場所が少なく、幼い3人の子どもをつれてどこへ行けばいいかわからなかったですね」と語る。そこで、個人や団体をつなぐ地域の子育て情報の窓口の必要性を感じ、「筑豊子育てネットワーク」設立に向けての準備を始めた。「共感してくれた3人ほどの仲間と子育てサークルを一つずつ回って、手作りの呼びかけ文を配りました。その頃はまだ子育てネットワークの意味が共有されていないと感じることが多くあり、一人一人に子育てネットワークの意義を伝えていくのが大変でした」と振り返る。下の双子の子どもはわずか6ヶ月。しかし「新しいものを作る喜びに、きついとは感じませんでした」。やっと迎えた発足式。「立ち上げ前だったこともあり、公共施設を借りることも当時は難しかった。しかたなく、飯塚市の公園で発足式をすることにした。9組ほどの親子で噴水の周りにシートを敷いて」。そんな始まりだった会も、昨年(平成19年度)活動10周年を迎えた。

転勤を機に広がったネットワーク

 「筑豊子育てネットワーク」の活動が軌道に乗り始めた矢先、夫の転勤に伴い飯塚市を離れることになった。そこで、転居先の筑紫野市を始め、県内各地で活動をしている子育て活動の仲間たちと連絡を取り合っていくうちに、飯塚市での活動で抱えていた同じような問題に直面していることに気付き、そこから、地域を超えた交流のしくみをつくりたいと考え始めるようになった。「それぞれの地域のリーダーたちで課題やノウハウを共有できたらいいなと思ったんです。距離的な問題があるので、パソコンでのメーリングリストで日常的に情報交換をしながら、年1回は顔の見える交流や情報交換としての実践交流会を行っています」。平成12年に設立した「子育てネットワーク研究会(通称:子ねっと研)」では、主に乳幼児の親のグループ活動を支える仕組みづくりに取り組んでいる。平成15年と16年にはこの研究会の事業として、文部科学省の支援を受け、子育て中の親子のほか行政関係者や研究者、学生ボランティアなど約五百人が集う実践交流会「子育てネットワークin九州」を開催。「実は2回でやめようと思っていたんですが、参加者からの予想以上の反響や福岡県立社会教育総合センターの支援のお陰で、続けてみようという機運になって」。翌年からは「子育てネットワークinふくおか(主催:福岡県立社会教育総合センター)」として開催。以来、市民主体の良さを消さないような事業を目指し続け、今年で6回目を迎えた。
 この事業は、「行政だけ」「民間だけ」ではなく、市民と行政が「『同じテーブルについて』『ともに創る』『一緒に汗をかく』協働のあり方にこだわっていると語る。実行委員は、自ら実感した子育ての課題について語り合うことから、課題解決に向けた事業の企画立案をおこない、事務や会場づくりといった運営までを皆で取り組んでいくことを大切にしている。アンケートによると、大人プログラムと同じくらい子どもプログラムの満足度が高い。親だけの学びや交流の機会だけではなく、「子どももともに学ぶ場」にこだわり続けている成果と言える。

学びに目覚める

 相戸さんは子育てネットワークでの出会いや経験を通して、公民館の館長になって共に支え合う地域づくりに関わりたいと考えるようになったた。そして、子どもが幼稚園に行きだした頃から、福岡県立大学の科目等履修生として勉強を始めた。「初めは社会教育という学問領域すら知りませんでしたが、学ぶことがおもしろくて、社会教育・生涯学習っていいなと思いました」。平成12年には放送大学教養学部に編入。「夜、子どもが寝た後に勉強していました。卒業資格をもらったときは『今までで一番勉強したな』と思い本当に嬉しかったですね」と語る。更に研究を深めたいと平成14年には九州大学大学院人間環境学府修士課程に進み、平成18年同学府の教育システム専攻教育学コース生涯学習専修博士後期課程に進学した。「博士後期課程は『究める』という研究の厳しさを日々直面していますが、実践課題から研究を始めたことはよかったと思っています」。家族は理解して支えてくれている。「最近では深夜まで課題をこなしていると、子どもたちが『今日は早く寝たほうがいいよ』って気遣ってくれることも」。子育てネットワーク活動は、実践と研究の原点でありライフワークとして活動を続けていきたい。子ねっと研の仲間とは、「老人になったらシルバーネットワーク(通称:シネット研)?とか言って、今と同じようなことやっているかもねって話しています」。

これからの夢とメッセージ

 「子どものために始めた活動からいろいろなことを学び、今、子どもたちに支えられていることを実感している」という相戸さん。良いときも悪いときも子どもたちには全部見せ、一喜一憂しながらも頑張っているということを伝えている。
 「3人の子どもを育てあげて30歳になった時、10年後の自分どうなっているのかな、と思っていたんです。今ちょうど40歳。一歩一歩ですが自分の目標に近づいていけたらいいですね。これからの10年は、自分に納得できる生き方、自分がどうあるべきかを考えながら、実践と研究の両方の視点から、社会に還元していく方法を考えていきたいと思っています」。
 「ほしいものがないならつくろう」と、子育てをしながら行動を起こした相戸さん。そこから新しい夢をみつけ、とても輝いて見えた。
                                    (2008年2月取材)

プロフィール

自身の3人の子どもの子育てをきっかけに、平成9年「筑豊子育てネットワーク(現「かてて!」)」(飯塚市)を発足。平成12年、県内外の地域を超えた子育てネットワーク「子育てネットワーク研究会(通称:子ねっと研)」を立ち上げた。
また、子育ての地域活動を契機に、福岡県立大学、放送大学で社会教育を学び、九州大学大学院人間環境学府教育システム専攻博士後期課程終了。
北九州市立大学、福岡県立大学等の非常勤講師を経て、平成26年4月から宮崎国際大学教育学部講師に就任。

 

 

 

 


 

 

 

 

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【あ】 【子育て支援】

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