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NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡」 理事長
「子どもを抱えた女性に、正社員としての就業の機会は少なく、男女の賃金格差もあるのに、シングルマザー個人の問題として、すべての責任が集約されてしまうのは、少しおかしいのではないか」。
このような問題意識を抱いたことが、大戸さんがシングルマザーへの活動を始めたきっかけだった。
1981(昭和56)年、自身も子どもが幼い頃に離婚。パートの求人に応募しても、「子どもがいるなら、子どもが病気をしたり何かあった時に、家族などがフォローできる体制が整っている人じゃないと駄目」と言われたこともあった。
「出産や育児で7割の女性が退職し、キャリアが中断していたり、働いていてもパートの場合は経済力がなく、離婚した途端に困窮してしまいます。また、離婚そのものが経済的な理由による場合も多く、1人の力で何とか切り開くことを迫られていたりします。
母子家庭への公的な福祉施策もあるが、必ずしも充実したものとは言えない。困窮した母子家庭の子どもが就学をあきらめて働くなど、それが貧困の再生産につながることもある」と語った。
1984(昭和59)年にシングルマザーへの活動を開始した頃は、市民サークルといった趣きで、少数ながらも草の根で当事者が集って活動をしていた。その後も、児童扶養手当の削減に対する行政への提言なども行いながら、地道な活動を続ける。
大きな転機が訪れたのは、NPO法人となり、2006(平成18)年に福岡市母子福祉センターの指定管理者に応募した時。それまでは、事務所は自宅、資金も少なく、何の後ろ盾もない中で活動していたので、「どうせ選ばれないよね」とも話していたという。しかし、そういった公的事業を通して支援活動をするのとしないのとでは、やれることの幅が大きく違ってくる。これを一つのチャンスとして捉え、一念発起して体制を整え、駄目で元々という気持ちで応募した。その努力が奏功し、指定管理者に選ばれたことを機に、26年間勤めた生命保険会社の営業職も退職し、しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡と母子福祉センターの管理・運営に専念することになる。
現在は、離婚などの生活相談、スキルアップ講座などの就業支援、ニュースレターやメールを通した情報共有、各種のリフレッシュイベントや講演会など、母子家庭に対するサポートを幅広く提供している。こういった活動は、自分自身の人生の経験に重なる部分も多く、「母子家庭支援は私のライフワーク」でもあるという。
本当に大変な思いをしているシングルマザーほど、仕事で疲れていたり、経済的に切り詰めていたりして、エネルギーが無くなり、母子家庭支援の施策を利用しない傾向もあるという。
「一人で抱え込まないでほしい。あなただけのせいじゃない。頑張っているのに責められることもあるけれど、『十分がんばっているんだよ』と伝えたい。『お母さんが元気だと、子どもも幸せなんですよ』と言ってあげたいです」。
また、今後の社会への思いとして、「社会構造全体の問題で、なかなか変わらない部分もあるけれど、ライフステージ毎に人生を楽しめて、多くの人々が助け合い、一生を豊かに生きていける、幸福度が高い社会になっていけばいいと思います」とも話す。
「自分自身も過去に苦労をしてきたけれど、人にも恵まれて多くの人に助けられました。だから私も多くの困っている人々の手助けをしてあげたい」
(2011年2月取材)
しんぐるまざあず・ふぉーらむでは、お花見や親子クッキングや小旅行など、母子が一緒に参加して楽しめる様々なレクリエーションも行っていますが、「そういった活動の中で、普段忙しいお母さんと一緒にふれ合って楽しそうにしている子ども達の笑顔を見ると、そういった催しを実施して良かったと思います」と話されました。
「シングルマザーとして今まで忙しく働いてきたけど、今は孫と遊んだりするのが楽しいし、仕事も充実していて幸せ。楽しく仕事をやっています」と話す笑顔が印象的でした。
NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡」理事長。1984(昭和59)年から、大手生命保険会社営業職として働く傍ら、シングルマザーが子どもと共に生きやすい社会や暮らしを求める活動を開始。2002(平成14)年、ゆるやかなネットワークで連携していた「しんぐるまざあず・ふぉーらむ東京」が内閣府でNPO法人として認証されたことに伴い、福岡の拠点として名称変更。2005(平成17)年にNPO法人として福岡県から認証を受ける。2006(平成18)年より、指定管理者として福岡市ひとり親家庭支援センター(旧福岡市母子福祉センター)の管理・運営も行っている。
キーワード
【あ】 【NPO・ボランティア】 【子育て支援】 【福祉】