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岩本 真由美(いわもとまゆみ)さん (2011年2月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

フレンチレストラン「Cache★Cache」 オーナーシェフ

命をかけて取り組めば、必ず道は開けます

 

人生を変えた三度の転機

 高校卒業後、すぐに専門学校に進学する人が多い料理の世界で、岩本真由美さんは大学で4年間、美学美術史を専攻したという異色の経歴の持ち主だ。幼い頃から料理を作ること、食べることが大好きだった岩本さんに、最初の転機が訪れたのは大学時代。カフェや和風ダイニングでのアルバイトを通して、料理で人に喜んでもらえる嬉しさや接客の楽しさを知った。
 「将来は自分の店を持ちたい」との思いに突き動かされ、周囲の誰も予想しなかった料理の道へ。和・洋・中とひと通りの基礎を学ぶ中で、フランス料理の奥深さに惹かれていく。盛り付けの美しさやコースの流れ、調理工程の複雑さなど、知れば知るほど探究心が刺激された。
 「年下の先輩に怒られることもあったし、休みの日はひたすらカフェの厨房でアルバイト。でも、他の人より4年スタートが遅いなら、4倍のスピードで頑張れば追いつける。好きだという気持ちが、最大のエネルギー源なんです」。

ハンデを武器に、ピンチをチャンスに

 二度目の転機は、現場実習での出会いだ。当時、厨房には女性を取らない厳しい店と言われていた「旬ふじわら」を、岩本さんはあえて実習先に選んだ。そのチャレンジ精神と積極性を見込まれ、卒業後の就職が決定。次世代の育成に熱心で、教え惜しみをしない師・藤原慎吾シェフの下で修業を重ねること2年半、最大の転機が訪れる。いつかはここに…と考えていた物件が空き、自分の店を持てるチャンスが巡ってきたのだ。
 「たった2年半の経験しかない未熟な私が、危ない橋を渡るのかと悩みましたが、次はいつ空くか分からない。無理だとあきらめて後悔するより、今の自分が持てる全力でぶつかろうと決めました。たとえ失敗してもまだ20代、学べることは絶対あるはずだと」。
 藤原シェフや家族の全面的なバックアップに支えられ、25歳の若きオーナーシェフが誕生。常に前向きで、ピンチをチャンスに変える岩本さんの熱意と努力が、実を結んだ瞬間だった。

多方面に広がる“私らしさ”

 経営者としての雑務やスタッフ教育、修業期間の短さを補うための勉強に追われながら、岩本さんは年に一度、母校の教壇に立つ。年齢が近い岩本さんの言葉に、学生たちも熱心に耳を傾ける。教える立場になって改めて、今まで支えてくれた人々への感謝の気持ちが強くなった。
 「大切なのは『自分はこれで生きていく、命をかける』という信念。何があっても絶対に逃げない、あきらめない、言い訳をしない。私が多くの先輩シェフに助けてもらったように、一生懸命頑張っている人には何でも教えたいし、力の限り支援したいと思います」。
 若い女性シェフとして注目され、料理以外のイベントに参加したり、取材を受けたりする機会も増えた。活躍の場の広がりとともに、女性だから話せること、男性シェフとは違う視点で伝えられることがあると感じている。「それこそが私ならでは仕事。何事も経験に勝るものはありません」。貪欲に教えを乞いながらも厳しいプロ意識に裏打ちされた岩本さんの、努力と感謝の日々は続いていく。

                                                                                                     (2011年2月取材)

コラム

湯のまち・別府で大学時代を過ごした岩本さんにとって、一番のリフレッシュは温泉に行くこと。ドライブを兼ねて遠出をするのが何よりの気分転換だという。プライベートな食事でも、おいしいものに出合うと「これは使える」と考えてしまうのは料理人の性。四六時中、店や料理のことが頭から離れないが、最近ではそれを楽しめるようになってきたそうだ。

プロフィール

福岡市生まれ。別府大学、中村調理製菓専門学校を卒業後、「旬ふじわら」藤原慎吾シェフの下で修業を積む。2005(平成17)年、25歳でレストラン「Cache★Cache(カシュカシュ)」をオープン。母校の特別講師を務めるほか、九州電力イリス福岡や岩田屋コミュニティカレッジで料理講座を担当。他店のシェフとコラボしたイベントにも積極的に参加している。

 

 

 

 


 

 

 

 

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