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有限会社Branches 代表取締役
20歳で出産、21歳で離婚。前夫の借金を返済するため、昼は美容師として、夜は飲食店で働きながら、母娘2人の生活を立て直していた権藤光枝さん。長女の預け先を探すものの、大切なわが子を安心して任せられる保育園は見つからなかった。「それなら自分が作ろう!」と起業を決意、がむしゃらに働いて資金を貯め、最初の保育園を開園したのは24歳の時。園児3人、スタッフ3人でのスタートだった。
「大きな認可保育園を経験してきたスタッフの中には、24時間保育への戸惑いや不安から辞めてしまう人もいました。でも、一生懸命に頑張っているお母さんたちを支えたい、安心して子どもを預けられる保育園を作りたいという思いを必死で訴えました」。
その熱意が通じ、今では園児約170人、スタッフ約20人を抱え、福岡市内に3つの「リトルワールド」を運営するまでに成長。子どもたちにより良い環境を、という信念が揺らぐことはなかった。
利用者のニーズは実にさまざまで、認可保育園の規定では対応できないことが多い。そうした要望に、できるだけきめ細かく、各家庭に合ったサービスを提供していくのが「リトルワールド」の強みだ。手作り給食、フレックス保育、姉妹園の相互利用、布団類の貸し出し、英会話教室、WEBカメラの導入、SNSでの情報交換…。自らも現役のワーキングマザーとして、常にユーザー視点に立ちながら、認可外保育園の自由度をフル活用してきた。0歳児から小学6年生まで幅広い年齢の子どもを受け入れ、地域の商店街や福祉施設を訪問するなど、子どもの社会性や自主性の醸成にも力を入れている。
「こういうサービスを提供したい!よりも、どうすればこの不安を解消できるか?と考えてアイデアを出し合います。一生のうちで一番大切な時期をお預かりしているのだから、保育の質は絶対に落とせません。将来、リトルワールドの中から、世界で活躍する人間が育ってほしいと願っています」。
今後は「リトルワールド」を市内各区に1園ずつ設置したいと考えている権藤さん。より充実したサービスの徹底はもちろん、食育や日本文化の理解にも重点を置いて、教育面を強化していく予定だ。同時に、認可外保育園を取り巻く現状を変えたいと、他園と連携して市に働きかけている。
認可外保育園でも、国の指導監督基準を満たした園には「基準適合届出施設」の証明書が交付される。安全性や保育の質の確保・維持に努めている良心的な保育園だ。しかし、そうした条件をクリアしても、いわゆる待機児童でなければ公的援助を受けることはできない。幼保一元化の議論にも加われない。
「市・県・国がもっと一体となって、子どもたちの将来を考えてほしい。補助金が欲しいというのも、園にとってのメリットではなく、親御さんの預けやすさ、保育の選択の幅を広げるために必要なことです」。これからも、働く母親の心強い味方でいてくれるに違いない。
(2011年2月取材)
毎日多くの子どもたちに囲まれ、常に気を張っている権藤さんがリラックスできるのは、マッサージの時間。何も考えずに心身を休め、英気を養うひと時だ。しかし、旅行中などスタッフから全く電話がないと、不安になる一面も。「信頼して任せてはいますが、つい気になって私からかけてしまうんですよ」
兵庫県生まれ。24歳の時に最初の24時間保育園を開園する。2006(平成18)年、有限会社Branchesを設立。現在、井尻、箱崎、祇園の3カ所で「リトルワールド」を運営し、働く母親の視点に立った多様かつ柔軟な保育サービスを提供している。2009(平成21)年、第8回女性企業家大賞最優秀賞を受賞。2010(平成22)年、第9回福岡県男女共同参画表彰(県民賞)受賞。
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