ふくおか女性いきいき塾、第7回目の講義は「経営者が推進する女性活躍」。
株式会社KMユナイテッド社長で関西学院大学 グローバル・アントレプレナーシップ教育研究センター客員研究員の竹延幸雄さんを講師にお迎えしました。
2013年に大阪で創業したKMユナイテッドは、塗装工事請負や塗料販売などを手がける会社です。2016年に経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれましたが、創業当初から女性活躍を意識していたわけではなく、男女が同じように働けるようにしたら、結果として女性が能力を発揮できるようになったのです。
私はもともと1950年創業の塗装会社・株式会社竹延で働いていました。建設業界は人材不足が深刻で、特に若手の採用・定着が難しく、職人の高齢化により技能の継承が危ぶまれている状況です。そこで、新たな枠組みでKMユナイテッドを設立しました。性別・国籍・年齢を問わない採用を掲げた結果、社員30人のうち約20名が未経験者で、20代の若手や女性が半数を占め、外国人もいます。
当社が取り組んでいる人材育成・定着の工夫は大きく3つあります。
ひとつは、ナンバー1インストラクター制度です。職人の世界は「10年で一人前」と言われ、技術をきちんと教える習慣がありません。しかし、当社ではトップクラスの職人が丁寧に教えることで、未経験者でも早く技術を習得できて、売上アップにつながっています。指導にあたるのは、関西塗装業界では有名な73歳のベテラン職人などで、教える職人の意欲も高まっています。また、トレーニングプログラムを組んだり、定期的に目標や現状を把握する仕組みを作ったり、社外の研修施設を活用したりして、人材の育成に力を入れています。
2つ目は、限定作業の高レベル化です。塗装の作業を観察して細かく分析したところ、経験を積まなければできない仕事は40~60%でした。経験が少なくてもできる仕事はあるのです。新人はそのような作業からスタートして、その分野ではベテラン職人以上のレベルを目指します。
3つ目は、雇用環境の改善です。建設業界では画期的な正社員採用、月給制、週休2日制等を導入しました。あわせて、女性が働き続けられる職場づくりにも取り組んでいます。出産を控えて現場で働けなくなった女性職人は、ペイントショップに配属。子育て中の女性でも朝から現場に出られるように、朝6時から預かる託児所を作りました。また、女性が働くためにはパートナーの理解が必要だと痛感し、夫婦同席面接を行っています。
女性職人が増える中で、女性の声をもとに変えてきたこともあります。例えば、業界ではシンナー塗料を使うのが一般的ですが、子育て中の女性がシンナー塗料による体への影響が気になると言ったのを機に、全面的に水性塗料に変更しました。結果として業界の先駆け的な存在となり、健康や環境に配慮する現場から声がかかり、仕事の引き合いが増えました。また、従来の塗料缶は重くて女性には運びにくく、片付けの手間もかかっていたため、軽くて運びやすくエコな段ボール容器を開発し、販売も始めました。
振り返ってみると、女性活躍への土俵づくり3本の矢は、日々の作業環境の改善をベースとして、雇用環境の改善、女性が輝く工法の開発・受注活動であると考えています。働きやすい環境を整えたことで、女性はもちろん男性や若手の応募も増えました。職人育成としては、クラフトマンからサブインストラクター、インストラクターという3ステップを設けたところ、女性や外国人の昇進が目立ち、他の職人にもいい刺激となっています。技術継承に関しては、大阪と京都で職人育成塾を開設するほか、一流職人が現場の人に技を教えられるようにテレワークを導入し、さらに近々、スマホで技の動画を見ることができる「技ログ」も立ち上げます。
当社では、働き方や職場環境を改革したことで、皆が主体的になって生産性が向上し、技能・自信・収入・収益アップにつながっています。これからも顧客満足と建設業界発展のためにイノベーションを繰り返し、誰もが制約を受けずにチャレンジできる人材育成に取り組んでいきたいと思います。
タイトル | ふくおか女性いきいき塾⑦ 経営者が推進する女性活躍 |
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開催日時 | 2017年11月11日(土) |