ふくおか女性いきいき塾、第9回目の講義は「国際情勢」。宮本アジア研究所代表の宮本雄二
さんを講師にお迎えしました。
まず、皆さんに知っていただきたいのは、世界には日本と違うものがあるということです。そもそも日本のルールが特殊で、私たちの当たり前は世界の当たり前じゃない、それは異文化体験をすればするほど分かります。
違うものと比較することによって、自分のいいところも悪いところも分かってきます。世の中には自分たちと違う価値観を持っていて、それが十分成り立っている社会があるのです。
更に、一番大事なのは歴史を知るということです。国や社会の考え方に歴史は影響を及ぼします。歴史を知ることによって、客観的な物の見方ができ、自分自身が分かってきます。自分自身が分かったら、何をすべきかも分かります。
もうひとつ大事なのは、自分の問題意識をシャープにすることです。漫然とした問題意識ではなく、絞り込んでいく。その時、考えても答えが出ない場合は、周りの人や外国に意見を求めてもいいのです。問題点をフォーカスすることによって、何が問題なのか、どんな意見を聞いたらいいのかが分かります。
経済のグローバリゼーションも進んでいます。グローバル経済では、相互依存が進んで、日本はますます諸外国の経済なしには生きていけなくなります。人の交流も進み、世界中の企業が人材を取り合います。日本も今、他国に負けない人材を取ろうと努力しています。
人の交流が進むと、いかにその人たちと共存する文化をつくり上げるかが重要になります。冒頭の話につながりますが、異文化に対する敬意、つまり異文化に対して、心を開いて理解しようとする気持ちが必要です。
ヨーロッパなどでは、異文化の人がいるのは当たり前で、日本は今やっとその状況になってきたので、異なるものを受け入れて日本の文化が変わる、これは好ましいことだと思います。
アジアの成長は著しく、日本はアジアの国々に経済協力、技術移転をし、その経済発展に大きな貢献をしてきました。近未来は間違いなく、アジアが中心になります。今後は、いかにアジアを安定させて、発展させるかが重要です。
まず、東アジア、隣国関係になりますが、これもやはり歴史が重要です。領土問題にも歴史が絡んでいますが、これは、政治家の判断次第で、解決できない問題ではありません。
加えて、安全保障の問題もあります。安全保障は性悪説の世界で、自分を守るために、軍事力を増やそうとして軍拡競争になり、戦争に発展します。経済や文化は国と国との関係を近づけますが、安全保障の問題は遠ざけることになるのです。
こういう状況で、日中関係は、大きな流れとしては改善していきますが、それぞれ内心では厳しい姿勢で相手を眺めるという関係になるだろうと思います。
中国も三十年あまり、10%近い経済成長を続けてきたため、大きなひずみが出始めています。まず、やるべきは、経済の改革です。労賃が上昇して、安い労賃を基にした製造業は成り立たなくなっているので、労働集約的なものから労働生産性を高める新たな経済構造に変えなければなりません。この経済構造を変える最大の鍵が国有企業改革です。政府の権限を縮小して市場経済に移行しないと、中国の経済全体の効率は上がりません。
もう一つは、官僚機構を有効にすることです。官僚システムが正常に機能するような改革が必要です。
経済がうまくいかなかったら、中国のあらゆる問題は爆発する可能性があります。そのためにも、中国経済、グローバル経済は国際的に協調的な政策でなくてはなりません。
アジアの女性リーダーについては、各国のビッグファミリーのメンバーとして、あるいは政治指導者の夫が死亡してその後継者として、ナンバーワンになっています。ドイツのメルケル首相のように後ろ盾のない中からは出ていません。
私が国連代表部で勤務した際、二人の女性上司がいました。一人は緒方貞子さん、その後任が赤松良子さん、この方たちはすばらしい上司だった。二人とも中途半端ではない、人並み以上の優れたものをもっておられました。
外務省の女性キャリア職員も、仕事をしながら結婚・出産することが難しかった時代もありましたが、最近やっと出産する人が増えてきました。
皆さんの前には、苦労して時代を切り開いてきた女性たちがいます。今はその時代に比べれば条件が緩和されているはずですから、大いに自信を持って進んでいってほしいと思います。
タイトル | ふくおか女性いきいき塾 ⑨国際情勢 |
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開催日時 | 2015年12月13日(日) |