管理職の部下マネジメントで最も重要なのは、部下の仕事意欲を高水準で持続することですが、それには、ダイバーシティ・マネジメントやワークライフ・バランス(WLB)支援が関係しています。ダイバーシティ・マネジメントの基本は「適材適所」ですが、従来の「適材」と考えられる人材像(日本人、男性、フルタイム勤務、時間制限なし、転勤制約なし)の見直しが不可欠で、プロジェクトに必要なスキルや経験で選ぶことが大事です。
また、女性を集めたチームが成功したことは、女性だからではなく、プロジェクトリーダーやメンバーの活動内容が大事なのであって、ダイバーシティ経営をやれば、自動的に経営効果に結実するのではなく、業績に結び付けるのはトップのマネジメントです。そして、ダイバーシティのポテンシャルを活かす機会を提供し、それを成果に結実するような戦略を立てていく経営理念が大事です。
ダイバーシティ・マネジメントでは、多様な人材、様々な考えを持っている人がいて、仕事も大事だけど、仕事以外でやりたいこと、やらねばならないことがある社員がいてもいいのです。1985年に成立した男女雇用機会均等法の立場は、男性と同じように働く能力がある女性に機会を与えるというもので、男性の働き方を変えないと女性の活躍の機会は増えません。共働きの男性も同様で、ワーク・ライフ・コンフリクト(WLC)の状態が続くと、仕事に意欲的に取り組めないので、部下に意欲的に働いてもらうためにもWLB支援が必要なのです。
WLBが実現できている状態というのは、仕事上の責任を果たし、上司から期待されている仕事、やりたい仕事をちゃんとやる、同時に、仕事以外でやりたいこと、やらねばならないことがあればそれもやれる状態です。管理職は、ワーク・ワーク(WW)社員だけではなく、ワーク・ライフ(WL)社員も仕事に意欲的に取り組めるようにしなくてはならず、それをマネジメントするのが管理職の役割だと言えます。
WLBが実現できる職場を作っていくために大事なことは、まず、多様な考え、自分と違う考えを持っている部下を理解し、可能な範囲で支援、受け入れることです。次に、「時間制約」のある社員でも、付加価値を最大化するような仕事の仕方に変えることです。アウトプットが何かを考え、メリハリのついた働き方をし、無駄な仕事はやめ優先順位をつけ大事な仕事から始めます。そして、急な介護での休業などに備え、情報共有も大事になります。更に、一人ひとりの能力アップをし、効率よく働くことが大事です。企業経営の点から言えば、今から変えるべきです。働き方改革を進めるために、生活改革をすべきで、仕事以外でやりたいことを見つけることが必要です。
部下に仕事を指示するときは、まず無駄な仕事をなくし、優先順位や仕事の出来栄えを指示するとともに、情報共有を進め、個人の能力開発を支援しなければなりません。マネジメントに今以上に時間が必要となるので、そのために、自分の業務を洗い出し、自身の担当すべき業務と部下に任せるべき業務の仕分けが必要ですが、それは結果的に部下の育成にもつながります。
また、残業を減らすために、一斉定時退社ではなく、例えば、各自が自由に週2日定時で帰るという制約を作ることで、時間制約のない人に時間意識を持たせ、仕事の仕方を変え、生活を変えるようになっていくことが可能になります。
最後になりますが、女性の活用については、男女の区別なく、仕事の意味や必要性を理解してもらい、仕事を割り振り、能力が足りなければ能力開発を支援していくことが大切です。
【講師プロフィール】
内閣府のワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員や男女共同参画会議議員など、人的資源管理の専門家として公務を務める傍ら、ワーク・ライフ・バランスなどについて著書・共著多数。企業の人事担当者や管理職向けに数多くの講演も行っている。
タイトル | ふくおか女性いきいき塾 ②両立支援 |
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開催日時 | 2015年7月19日(日) |