今年度のふくおか女性いきいき塾の講義も、残り3回となりました。第9回目は東京大学名誉教授の神野直彦さんを迎え、公開講座で「行財政」について学びました。会場には男性受講者の姿も目立ちました。
神野さんは「今は歴史の大きな転換期にあり、重化学工業の時代から、ソフト産業を基軸にする知識社会へ向かっている」と指摘します。これまでの重化学工業を基盤とした中央集権的「福祉国家」は行き詰っています。産業構造や世界のルールが変わっていることに気づいたOECD諸国は、1970年代から公共資本であるインフラストラクチュアと人々の生活を保障する社会的セーフティネットの張り替えを行ってきました。産業構造を転換するために、一人一人の能力を高め、労働市場を弾力化することで新産業への移行を促します。そのためには公的資金を公共事業ではなく、教育やリカレント教育、職業訓練などに移していくことが重要だと述べられました。
また、社会的セーフティネットについて、社会保障と経済的パフォーマンスなどのデータを示した上で、「社会保障の大小と貧困・格差は関係性があるが、経済成長に関しての因果関係はない。つまり格差や貧困を伴わずに経済成長するためには、社会保障を大きくしながら経済成長していく道を選ばざるを得ないのです。
しかし再分配のパラドックスといって、貧しい人への現金給付を大きくすればするほど、貧困や格差があふれ出る現象が起こってしまう。では社会保障を大きくしても経済成長をしているスウェーデンやデンマークは何が違うかというと、現物給付と教育への分配です。現物給付とは、介護を含む広い意味での養老サービスや保育所などの保育サービスである。重化学工業の時代には家庭内のことを女性が無償で担っていたが、サービスや知識を集約する新社会には女性の力が必要。サービスの現物給付を増やすことで、女性でも誰もが安心して社会に出ていける」と話されました。
難しいイメージを持たれがちな「行財政」を、塾生たちはより身近でリアルなものとして理解できたようで、「私たちが何を大切にし、どんな社会にしたいのか、広い視野で考えなければならないと感じました」などの感想がありました。
タイトル | 講義⑨「行財政」 |
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開催日時 | 2013年12月14日(土) |