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【センター長コラム No.84】意外と知らないキーワード③――30%、40%、50%  (2022年12月27日配信)

こんにちは。

寒風の中、スイセンが咲いています。サザンカも次々に花をつけています。

お変わりありませんか。

 

 

今回のキーワードは数字です。

 

第4次男女共同参画基本計画に示されていた「202030(にいまるにいまるさんまる)は、どうなったのですか」という質問を受けることがあります。

 

「202030」とは、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%にするという目標で、この目標を頻繁に目にするようになってから、女性の割合を30%にするという意識が広がりましたが、「30%」はどこから来たのか、また、女性の割合は「30%」だけでなく、「40%」も、「50%」もある、ということをご存じですか。

今回は、「30%」、「40%」、「50%」という数字についてお話ししたいと思います。

 

●30%

まず、「202030」は、いつ、どのように決まったのかについて、おさえておきたいと思います。

 

これは、国の男女共同参画推進本部の2003年(平成15年)6月20日付「女性のチャレンジ支援策の推進について」という決定の中の「積極的改善措置」に関する決定がベースとなっています。(「積極的改善措置」の説明は、前回のコラムをご参照ください)

 

男女共同参画推進本部の決定は、「積極的改善措置」に関して、「・・・国連ナイロビ将来戦略勧告で示された国際的な目標である30%の目標数値や諸外国の状況を踏まえ、社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する。そのため、政府は、民間に先行して積極的に女性の登用等に取り組むとともに、各分野においてそれぞれ目標数値と達成期限を定めた自主的な取組が進められることを奨励する」と述べています。

 

「国連ナイロビ将来戦略勧告」とは、1985年の第3回世界女性会議で採択された「ナイロビ将来戦略(女性の地位向上を図るために西暦2000年に向けて各国が効果的な措置をとるためのガイドライン)」の実施ペースを速めることを各国に要請した勧告のことで、1990年に経済社会理事会で決議されました。

 

勧告には、「政府、政党、労働組合、職業団体その他の代表的団体は、それぞれ西暦2000年までに男女の平等参加を達成するため、指導的地位に就く女性の割合を、1995年までに少なくとも30%にまで増やすという目標を目指し、それらの地位に女性をつけるための募集及び訓練プログラムを定めるべきである」と述べられています。

 

日本は、勧告から13年後の2003年、上述の男女共同参画推進本部の決定によって、「女性を30%に」の目標、すなわち「202030」をスタートしたのです。

 

「指導的地位」については、2007年(平成19年)に、男女共同参画会議で「(1)議会議員、(2)法人・団体等における課長相当職以上の者、(3)専門的・技術的な職業のうち、特に専門性が高い職業に従事する者とする」と定義されました。

 

「202030」の普及によって「30%」という数字が知られるようになりました。

また、社会学者が提唱した、組織の中の少数者の比率が3割を超えると、少数者の意見が意思決定に影響を及ぼすようになるという「黄金の3割理論」が広まり、女性の管理職の割合を30%にするという考えが広がりました。

 

●40%

しかし、30%は最低の基準であって、男女共同参画社会基本法には、「4割」という数字があるのをご存じですか。

基本法には、男女共同参画基本計画や男女共同参画に関する重要事項を審議するために、内閣府に男女共同参画会議を置くことを定めていますが、その男女共同参画会議の有識者メンバーを選任するとき、「男女どちらか一方の数が、十分の四未満であってはならない」ということが定められています(第25条第3項)。

 

男女雇用機会均等法の「均等」についても、厚生労働省の見解によれば、例えば、1つの雇用管理区分において女性労働者の割合が4割を下回っている場合、「格差が存在している」、つまり「均等ではない」と判断されます。

 

●50%

そして最後に「50%」ですが、これは、「202030」のその後とも関連する数字ですので、「202030はどうなったか」について、先にお答えします。

 

2020年12月25日に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」には、「国際社会において、2030年までにジェンダー平等の達成を目指していることも踏まえ、2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取り組みを進める」となっています。

 

後半部分にあるように、「202030」の次の目標は、「2020年代の可能な限り早期に」、「30%程度」を目指すという目標になり、先送りされた形になりました。

 

以上が「202030」に関する質問の答えですが、私は、前半部分の、「国際社会において、2030年までにジェンダー平等の達成を目指している」ということを、もっと意識する必要があると思っています

それが「50%」です。

 

これは、2015年3月に開催された「国連婦人の地位委員会会合(北京+20)」で、「2030年までに指導的な立場の半分を女性にする」という目標が掲げられたことを言っているのです。この目標は、日本政府を含め各国の合意を得たものです。

 

いま世界水準は「50%」となっています。

この目標は、「Planet 50-50 by 2030」と名づけられ、国連の女性政策の担当組織である「UN Women」が、2030年までにPlanet 50-50 を実現する取組を加速させようというキャンペーンを行っており、各国政府に、女性と少女の最大限の潜在能力の発揮を阻む課題に取り組んでいくことを求めています。

 

日本も取組を加速させることが求められており、「第5次男女共同参画基本計画」は、そのことに触れたものです。

 

基本計画は、「指導的地位に占める女性の割合が 2020 年代の可能な限り早期に 30%程度となるよう目指して取組を進める。さらに、その水準を通過点として、指導的地位に占める女性の割合が 30%を超えて更に上昇し、2030 年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。そのため、国際的水準も意識しつつ、男女共同参画社会基本法第2条第2号に定められている積極的改善措置(ポジティブ・アクション)も含め、人材登用・育成や政治分野における取組を強化する必要がある。」としています。

 

以上のように、私たちは、「30%」は通過点であり、「世界の目標は2030年までに50%」であるということを意識しながらし、我が国の計画実施の進捗状況を注視するとともに、私たちの身近なところでも、男女共同参画の推進に取り組んでいかなければならないと思う次第です。

 

今年はこれが最終回です。来年もまた、男女共同参画の情報をお届けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

なお、「男女共同参画」に関しては、以前のセンター長コラムもご参照ください。

【No.61】男女共同参画よもやま話――男女共同参画週間によせて」

【No.64】「ジェンダー平等」と「男女共同参画」(その1)――「男女共同参画」は、いつ、どこから来たのか

【No.65】「ジェンダー平等」と「男女共同参画」(その2)――「女性」から「ジェンダー」へ

【No.66】「ジェンダー平等」と「男女共同参画」(その3)――「男女共同参画」と「ジェンダー平等」はどう違うのか

【No.67】「男女共同参画局」が内閣府にあるのはなぜか――「男女共同参画」をもっと知るために

 

それから、11月26日に開催した「あすばる男女共同参画フォーラム2022」で行った「大森美香さんのスペシャルトーク」に関して、多くの方からのご要望にお応えして、記録用に収録したビデオをお正月に特別配信することになりましたのでお知らせします。

 

 

最後は、マイ農園だよりです。今年は柑橘類が不作です。デコポンも3つしかなっていません。そのうちの1個をとって、「フルーツポマンダー」という香りの置物をつくっています。先端のとがったクローブというスパイスを刺し、シナモン粉をまぶして、乾かします。完成を楽しみにしているところです。

 

コロナの感染がまた拡大しています。くれぐれも健康にご留意され、よいお年をお迎えください。

ではまた。                                                                                 (2022.12.27)

 

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