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【センター長コラム No.72】子育て支援を企業の成長戦略に ——改正育児・介護休業法が施行されます——  (2022年3月31日配信)

唐子咲きのツバキがたくさん花をつけました。唐子咲きとは、おしべ・めしべが花びらのように変化したもので、1つ1つの花がとても豪華です。土佐ミズキも満開になりました。お変わりありませんか。

 

さて、男性の育児休業取得を促進することを目的に、昨年6月に改正された育児・介護休業法が4月1日から段階的に施行されます。

 

改正点は、

①育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

②対象者への育児休業制度の個別の周知と意向確認

③有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件の緩和

④出生時育児休業(産後パパ育休)創設、育児休業の分割取得

⑤従業員1,000人以上の企業の育児休業取得状況の公表義務化                                        

の5つです。①、②、③が、4月1日からの施行、④が10月1日、⑤が来年4月1日施行となります。(詳細はこちら

 

あすばるでは、3月31日発行の情報誌『あすばる~ん No.104』に、「男性の育児休業」を特集しました。『あすばる~ん』は、県内の市役所や町村役場で入手できるほか、あすばるのホームページでも読むことができますので、是非ご覧いただきたいと思います。

 

私は、その『あすばる~ん』の巻末に、育児休業に関するコラムを書いていますが、字数の関係でかなり圧縮しましたので、少し補足をしたいと思います。

 

歴史を振り返ると、「育児・介護休業法」の前身は、今からちょうど30年前の1992年に施行された「育児休業法」です。育児休業法には、男女の労働者が申し出により育児休業を取得できることや、育児休業の取得を理由とする解雇の禁止などが定められました。

 

実は、育児休業については、さらにその20年前の1972年に制定された勤労婦人福祉法で、「女性の」育児休業が事業主の努力義務として規定されていましたが、育児休業法によって、「男女ともに」育児休業を取得できることが権利として認められたのです。

1970年代80年代と、だんだん働く女性が増え、1990年代には共働きの世帯と専業主婦の世帯がほぼ同数になっていました。

 

小中学校の女性教員、看護師、保育士などは、1975年に成立した別の法律「義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律」で育児休業を取得できるようになっていましたが、育児のために退職を余儀なくされていた一般の女性労働者は、育児休業法によって、雇用継続という長年の夢がかなったのです。

 

そして今、共働き世帯は専業主婦世帯の2倍を優に超えます。女性が育児のために退職することなく職場で能力を発揮することが望まれますが、いまだ4割の女性が、第一子出産後に退職しています。

 

家事・育児を夫婦で分担しているという家庭は6割に上りますが、その時間を見ると、家事時間も育児時間も、女性は男性の2倍以上を費やしています。仕事時間と家事・育児時間を合算した「働く時間」は、男性よりも女性のほうが多いのです。

男性の働きすぎがよく指摘されますが、働く女性が、仕事と家事・育児で働きすぎの状態であることを見なければならないと思います。

 

昨年5月、関西経済同友会が、「子育て支援を企業の成長戦略に~Well-being向上型戦略への大転換~」という提言を発表しました。Well-beingとは、「幸福。心から満足している」ということです。「提言」では「善き生き方」と訳しています。

 

「提言」は、「子育ての諸課題を個人だけが負担する『自助』が限界に達しているなか、子育てと仕事の両立を阻む要因の多くが企業に起因することから、企業こそが先陣を切って子育て問題の解決に取り組むべきである」とし、「社員がwell-being(善き生き方)」を達成し仕事に打ち込める環境を整備することは、生産性や創造性の向上に寄与することから、企業は子育て支援を福利厚生ではなく、重要な成長戦略として捉えるべきである」と述べています。

 

思うに、子育ては、日常の世話だけでも予期せぬ出来事の連続です。加えて、親の都合に関係なく突然起きるケガや急な発熱などにも的確に対処しなければならず、いつも段取りの練習や危機管理の訓練をしているようなものです。育児休業は、「休業」と言っても「休む」のではなく、異業種の職場での体験研修のようなものだと思います。

判断力や対応力、発想の転換も求められますし、社員の視野も広がると思います。

 

また、子育てを支えてくれる会社への帰属意識も高まります。リターンは大きいと思います。人こそ最良の資源です。企業は、育児休業を「休み」ととらえるのではなく、人材育成への投資として考えてほしいと思います。

 

『あすばる~ん』にも1つの調査を紹介していますが、大学生の多くはジェンダー平等意識も高く、将来、夫婦でともに子育てにかかわりたいと考えています。企業が優秀な人材を確保し、その定着を図るためには、男女双方に対する子育て支援は重要なキーワードだと言えます。

 

上に紹介した、関西経済同友会の「提言」は、企業や経営者が、子育て支援を女性のための施策としてのみ位置づけていること、経営者と働き手に認識のズレがあること、経営者に、性別役割分担意識、仕事第一主義などのアンコンシャス・バイアスがあることを指摘しています。

 

そして、「提言」のサマリーには、【総論】として次のように総括しています。

●働く世代の仕事と子育ての両立を経営者のリーダーシップで実現すべき。子育て支援を企業の持続的成長には不可欠な成長戦略の一つとして捉え責任をもって実行すべき。

●男性の家庭活躍(育児・家事参画)が進めば社員の家庭関係は向上し、社員のwell-being向上は企業の生産性や評価向上に寄与すると共に、少子化対策や女性活躍推進、人生100年時代への対応といった社会課題解決へと波及する。日本の持続的成長の為、スピード感を持ち、重点的に対策を講じるべき。

 

「提言」は、関西地区だけでなく日本全体の企業が取り組むべきことだと思います。
「提言」はこちら

子育て支援を企業の成長戦略と考えていただきたいと思います。

 

終わりは、マイ農園だよりです。

サクランボの佐藤錦。3月初めに花が咲き、小さな実ができてきました。大きなサクランボがとれるよう、今年は摘果をしてみました。

気候の変わり目、どうぞご自愛ください。

                                                     (2022.03.31)

 

 

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