こんにちは。お変わりありませんか。
クチナシの実が色づきつつあります。冬になるとオレンジ色になるので、おせちのきんとんをつくるときにサツマイモと一緒にゆでるなど、食材を黄色に着色するときに使います。私は、クミンやブラックペッパー、タイ米と一緒にコップに入れて、テーブル飾りもつくっています。この飾りは、エキゾチックでインパクトがあるので、食事会の話のタネになります。
1999年に制定された「男女共同参画社会基本法」について、前回は、男女共同参画社会とはどのような社会か、なぜ男女共同参画社会の実現が必要か、「男女共同参画」という言葉はいつごろから使われているのかについてお話ししました。
今回は、まず初めに、前回お話しした「なぜ男女共同参画社会の実現が必要か」という点に関連して、「男女共同参画社会実現の意義」についてお話しし、「なぜ基本法が必要なのか」、「『基本法』とはどういう法律か」について、お話ししたいと思います。
まず、男女共同参画社会実現の意義ですが、基本法制定にあたって、当時の男女共同参画審議会が内閣総理大臣に答申した『男女共同参画社会基本法について -男女共同参画社会を形成するための基礎的条件づくり―』に、次の5つの点があげられています。
①人権の確立
②政策・方針決定過程への参画による民主主義の成熟
③男女共同参画の視点の定着・深化
④新たな価値の創造
⑤地球社会への貢献
①の人権の確立は、性別による差別や性に起因する暴力が根絶され、男女が自立し自らの存在に誇りを持つと同時に一人の人間として敬意が払われる社会をつくることで、真の人権の確立が図られるというものです。
②の政策・方針決定過程への参画による民主主義の成熟は、女性が政策・方針決定過程に参画することは、社会の構成をより正確に反映させ、民主主義の全体的成熟を促すことになるということです。
③の男女共同参画の視点の定着・深化は、男女共同参画の視点が社会の仕組みや制度の運用に取り入れられ、定着することによって、男女が、固定的な役割分担にとらわれず、自分の個性や能力を十分に発揮することができるというものです。
④の新たな価値の創造は、多様な人々が社会のあらゆる分野に参画することによって、新たな価値が創造され、これによって、従来の理論では行き詰ったさまざまな問題を打開する道が開かれるとともに、皆が、より質の高い生活を享受できるというものです。
⑤の地球社会への貢献は、我が国の社会が国際社会と相互に密接な関係がある中で、日本が自ら男女共同参画社会の形成を促進するとともに、貧困・人口・環境など早急な解決が求められている地球規模の問題に関して、男女共同参画の視点に立って積極的に取り組むことによって、地球社会に貢献することができるというものです。
ちなみに、総理府が1998年(平成10年)に行った「男女共同参画社会に関する有識者アンケート調査」では、男女共同参画社会を実現すべき理由について、下図のような結果が出ています。
出典:冊子『男女共同参画社会の実現を目指して―男女共同参画社会基本法のあらまし―』 (1999年、総理府男女共同参画室)
「男性も女性も、多様な生き方を選択できるようにするため」という回答が多くなっています。
では次に、なぜ、基本法が必要なのかについてお話ししたいと思います。
それは、男女共同参画の実現に向けた取組みを総合的に行うためです。
男女共同参画の実現の取組は、職場、家庭、学校、地域社会など、多くの分野において取組が行われなければならず、また、さまざまな角度からのアプローチが必要で、かつ、それらの取組が総合的に行われなければならないからです。
男女共同参画審議会の答申では、必要なアプローチとして次の3つがあげられています。
㋐個人や団体による性別に基づく差別の撤廃
㋑男女共同参画を積極的に促進する措置(ポジティブ・アクション)の実施
㋒男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し
㋐の個人や団体による性別に基づく差別の撤廃は文言のとおりです。
㋑の「ポジティブ・アクション」とは、過去における社会的・構造的な差別によって、現在不利益を被っている集団に対して、一定の範囲で特別な機会を提供するなどして、実質的な機会均等を実現することを目的とする暫定的な措置のことです。我が国は、過去の経緯により男女の格差が大きいことから、法によって、積極的改善措置をとろうとしたのです。
㋒は、1995年に開催された第4回世界女性会議後、各国で、男女共同参画の視点に立った社会制度や慣行の見直しが進められており、我が国も同様の取組が必要とされたものです。
以上のように、男女共同参画社会の実現を目指す取り組みは、多くの場で、いろいろなアプローチにより行われる必要があり、これらの取組を、整合性をもって総合的、効果的に推進していくためには、基本法によって、基本理念を明らかにする必要があるとされたのでした。
実は私は、㋒に関連しますが、1995年に韓国で「女性発展基本法」が制定されたことが大きく作用したと思っています。韓国は、第4回世界女性会議のわずか1か月後に法の制定を決定し、その後急ピッチで制定作業を進め、1995年12月に女性発展基本法を制定しました。
日本と同じ東アジアの儒教国家で、しばしば女性の状況を比較される韓国が、第4回世界女性会議の余韻の残る1995年中に「女性発展基本法」を制定したことは、我が国の女性政策にかかわる人たちに強いインパクトを与えたと思われます。
次に、「基本法」とは、どのような法律かについてお話ししたいと思います。
「教育基本法」、「環境基本法」、「災害対策基本法」など、「基本法」という名前のついた法律はいろいろあります。
「基本法」とは、国政の重要分野について、基本的な理念、制度、施策に関する基本方針を明示した法律です。
我が国の法体系としては、最高法規が憲法で、その下に法律があります。基本法は、法形式としては、一般の法律と同じ位置づけですが、その対象とする政策分野の施策を方向づけるものであり、実質的には、その対象分野について他の法律に優越する性格を持つものと考えられています。
男女共同参画社会の形成の分野において、個別法令を解釈・運用したり、立案したりする際に、基本法に規定されている基本的な政策目標や政策理念に沿うように考慮しなければならないようにするためというのが、基本法を制定する大きな理由です。
男女共同参画社会形成の分野における施策を行う場合や法律を制定する際には、その目的や内容が男女共同参画社会基本法の定める基本理念や基本方針に沿っていることが求められるのです。
例えば、2015年(平成27年)に制定された、いわゆる「女性活躍推進法」を見ると、第1条(目的)の中に、「この法律は、・・・男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め・・・・」と書かれています。
2018年(平成30年)に制定された、いわゆる「政治分野における男女共同参画推進法」も、第1条に同様のことが書かれていますのでご確認ください。
以上が今日のお話です。シリーズその3では、男女共同参画社会基本法に定められている基本理念など、男女共同参画社会実現の施策の仕組みに関してお話したいと思います。
最後は、マイ農園だよりです。
ベランダのプランターにバジルの花が咲いています。このバジルは、昨年育てたバジルからとったタネをまいて大きくなったベランダ2代目のバジルで、この夏、スパゲティやピザトーストをつくるときに活躍しました。
いま、プランターでは、ニンジンやカリフラワー、ブロッコリーなどが育っています。また、今年は、ポットにソラマメの種をまいて、育苗に挑戦しています。
ではまた。 (2020.11.06)