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【センター長コラム】 国連に行ったせんべいーー女子差別撤廃条約こぼれ話  (2019年9月24日配信)

「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、お彼岸を忘れずに教えてくれるのが彼岸花です。田んぼを縁どるように咲くあぜ道の赤い彼岸花は、農家に育った私の原風景で、私は、実家から赤と白の彼岸花の球根を持ってきて、今の私の家に植えています。

毎年赤のほうがたくさん出ていたのに、今年は、白の彼岸花だけが出てきました。

紫色の実はムラサキシキブ。前回ご紹介したサフランモドキとは大違いの、みやびで素敵な名前が付いています。最初はグラデーションですが、秋が深まると全体が紫色になります。白い花は玉すだれです。

  
 
 
 

最近、コラムの読者から「読んだよ」という感想や激励をいただくことが多くなりました。ありがとうございます。中でも、女子差別撤廃条約の署名に関する7月のコラム「歴史が動いた夏」と、6月の「憲法第24条を書いた女性」にはたくさんの感想をいただきました。

ベアテ・シロタさんに関しては、ベアテさんの著書『1995年のクリスマス』にちなんで、12月ごろにまた書くことにして、今回は、女子差別撤廃条約の話題をもう一つ書きたいと思います。

 

まずは、お知らせから。

あすばるでは、11月23日(土・祝)に開催する「あすばるフォーラム」に、女子差別撤廃条約研究の第一人者である、文京学院大学名誉教授の山下泰子さんをお招きして講演会を開催します。山下さんは、女子差別撤廃条約の研究者であるだけでなく、国連の経済社会理事会の協議資格(特別の連携関係)を持つNGO「国際女性の地位協会」の会長として、条約の普及活動にも力を入れておられます。楽しくためになる話が聞けます。多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

 

また、フォーラム前日の11月22日(金)の夕方には、山下泰子さんを囲んで、大学生が、これからのライフステージの中で考えられる、就職や結婚、出産、子育て等のライフイベントと条約の関係について討論します。傍聴自由、会場からの発言も大歓迎です。是非ご参加ください。

 

それでは、国連に行ったせんべいについてお話ししたいと思います。このせんべいは、山下泰子さんと私の小さな接点です。

 

女子差別撤廃条約には、加盟国は、4年ごとに、その国の条約の実施状況のレポートを国連に提出することが定められており、レポートは、条約によって設置されている女子差別撤廃委員会の審査を受けることになっています。今回のコラムは、2003年に国連本部で開かれた女子差別撤廃委員会による日本レポートの審議会の話です。

 

2003年は、日本が1998年と2002年に提出した第4次と第5次のレポートの審議が行われたのですが、審議には、日本の政府代表団のほかに、日本の16のNGOから57人が審議を傍聴するために参加しました。

 

私は当時、北九州市立男女共同参画センター「ムーブ」に副所長として勤務していたのですが、ムーブからも、所長が、NGOの一員としてこの審議に参加しました。ムーブでは、女子差別撤廃条約を自分の言葉で再表現する「翻訳コンクール」を実施し、優れた「翻訳」をもとに、女子差別撤廃条約の絵本『世界中のひまわり姫へ』を出版するなど、女子差別撤廃条約の普及活動を行っていたので、日本のNGOの活動としてそういった資料を持って行ったのです。

 

資料と一緒に持って行ったのが、「せんべい」です。

 

私は、ムーブに勤め始めたときから、多くの人にムーブを知ってもらうために、オリジナルの、ちょっとしたお土産をつくりたいと事あるごとに言っていました。すると、民間からの登用でムーブに勤務していた課長が、ご夫婦二人で手作りしているせんべい屋さんを探してきてくれたのです。

 

オリジナルのお土産づくりは、私がその前の職場である北九州市立大学に勤務したときから思っていたことでした。大学で、就職先開拓のために企業回りをしていたのですが、手土産になるような、大学をPRする「北九大せんべい」かクッキーがあればいいと思って、いろいろ働きかけをしましたが、実現できずにいたものでした。

 

早速工場に伺うと、せんべいは1枚1枚丁寧に焼かれており、焼印だけこちらで用意すれば、せんべいにそれを押してくれるということでした。焼印製作所も紹介してもらい、すぐに、「ムーブせんべい」づくりに取り掛かりました。

 

せんべいは、8枚ほど入った1袋が200円と、手軽に買える値段に設定できたので、かなり売れると思い、単なるムーブPRのお土産というよりも、女子差別撤廃条約の普及に使おうと、女子差別撤廃条約の主な条文を1条ずつ印刷した色紙をリボンでせんべいに結びつけ、女子差別撤廃条約(Convention on the Elimination of all Forms of Discrimination against Women:CEDAW)のCEDAWをつけて、「CEDAWせんべい」として売り出しました。

これは6条のせんべい、これは9条のせんべいといった具合になっていて、たまたま手にしたせんべいから、条約に関心を持ってもらおうという意図です。

 

CEDAWせんべいは、お土産としてだけではなく、女性団体の会合や地域の行事の記念品として重宝されました。そして、2003年に国連で行われた、日本の女子差別撤廃条約実施レポートの審議会場にも、ムーブの三隅佳子所長が、ほかの資料とともに持って行ったのでした。

 

日本レポートの審議が行われる前日、日本から参加したNGOのメンバーは、女子差別撤廃委員会の委員に対して、NGOの取組と考えを伝えるための「NGOランチタイムブリーフィング」を開催したのですが、そこでのお茶菓子として、三隅ムーブ所長が「CEDAWせんべい」を参加者に配りました。

 

ブリーフィングで、NGOの取組を紹介する役割を担当していたのが、今年のあすばるフォーラムにお招きした山下泰子さんです。山下さんは、女子差別撤廃委員会の皆さんに、「これは条約を噛み砕いて栄養にしようという意味を込めて日本のNGOがつくった『CEDAW クッキー』です」と紹介してくださり、みんなでせんべいを噛み砕いて食べたそうです。

 

私は国連に行ったことはありませんが、ムーブのせんべいは十何年も前に国連に行きました。以来、「CEDAWせんべい」は、「女子差別撤廃条約を噛み砕く」というセールスコピーで販売しました。

 

その後、ご夫婦のせんべい屋さんは廃業されましたが、焼印は北九州市の女性団体「北九州市女性団体連絡会議」に引き継がれ、別のせんべい屋さんの製造による「ムーブせんべい」が、毎年7月に開催されるムーブフェスタで販売されています。

今年も、ムーブせんべいを食べながら、当時のことを懐かしく思い出しました。

 

最後に、私の大好きなポポーの収穫の写真です。

たくさん実がなっていたポポーの木が台風で根こそぎ倒れてしまい、新しく苗木を植えて、今年7~8年目でしょうか、やっと実がなるようになりました。

熟すとひとりでに落ちる実を2~3日追熟させると、部屋中が、いかにも「南国の果実」といったにおいでいっぱいになり、皮が少し黒ずんだ頃が食べごろです。

実の中にはたくさんの種がありますが、黄色い果肉は甘くねっとりとして、独特のトロピカルな味がします。

 

5月のサクランボの時期に紫色の花が咲きます。今年は2個しか収穫できなかったので、しみじみ味わいました。

ではまた。

                                                                     (2019.09.24)

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