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清水 舞子(しみずまいこ)さん    (2013年7月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

みどりのくうかん 主宰

自然に包まれた廃校を子どもたちの集う場に

 廃校になった旧若宮南小学校の玄関で私達を迎えてくれた清水舞子さん。100年の歴史を持つ学校を、多くの子どもたちが集う場所として活用しようと、親子で楽しめる催しを定期的に企画・運営している。子育てと仕事をしながら「できることを積み重ねてきた」と話し始めた内容は、子どもや地域への愛情にあふれていた。

まちなかから山あいの里へ

 北九州市黒崎地区で育ったため、自然豊かな環境に憧れを抱いていた。夫から、「兄弟で川遊びをして」とか「食べられる草を見分けられる」といった話を聞くたびにうらやましかったという。子育てをするのなら自然あふれる土地で、親子の思い出をたくさん作りたいと思っていた。
 結婚し、宮若市日吉地区にある夫の実家で、義父母・祖母との同居生活を始めたのは25歳のとき。山あいにあるため過疎化が進み高齢者が多い。「昔ながらの風習で、お盆には海藻で『おきゅうと』を作り、『たらわた』を煮るんです」。やがて、2人の娘の母となり、地域の生活に馴染んでいった。専門学校を卒業以来、結婚後も臨床工学技士として八幡西区の病院にフルタイムで勤務していた。しかし、子どもと接する時間を増やしたいという思いがあり、次女の産休明けから、パート勤務へと働くスタイルを変えた。

廃校を「みどりのくうかん」に

 長女の小学校入学を控えた2010年、校区の若宮南小学校が若宮小学校に統合されることになった。当時の生徒はわずか6人。清水さんも「多くの友達と学校生活を送ってほしい」と統合を市に要望した一人だった。だが、100年の歴史を持つ小学校が廃校になることに責任を感じていた。「日吉のシンボルともいえる小学校を、多くの子どもたちが集まってくる場所として再生できないだろうか?」。それが『みどりのくうかん』のはじまりであり、「廃校活用の提案」でもあった。
 注目したのは、図書室の充実した蔵書。まずは、「お話し会」をしようと思い立ち、市役所に学校利用の許可をもらいに行った。自治会長の理解も得た。手書きでチラシを作り、若宮地区の4つの小学校と1つの幼稚園に出向いて、読み聞かせの会の代表者に声をかけた。協力者も含め約20人の親子が集まったという。子どもたちはすぐ仲良くなり、母親たちは各学校の情報交換をした。「過疎化が進む土地では、地域のコミュニティをどうするかという問題があると思うんです。参加した方から『こういうやり方もあるんやね』という声もいただきました」。

「自由な学校」のスタイルを大事にしたい

 2回の「お話し会」を開催した2011年に続き、2012年には、本の紹介をしてお互いに貸し借りする「ブックトレード」や、アロマの入浴剤作りなど、教室を利用したワークショップを主に行った。2013年は「日吉の自然を楽しもう」というテーマで『日吉遊楽会』と名付けた屋外活動が中心となった。これは「むしめづる会」という、自然遊びや工作などを通して、虫のかわいらしさを伝えている団体との共同企画。「いきものさがし」や「山菜を楽しもう」「ドングリを楽しもう!」など、生きた自然体験ができ、親子共に楽しめる。
 「子どもたちは生き物相手に何をしでかすかわからない。でもとにかく楽しそう。虫を捕まえたら “虫博士”が他の子たちに自分の知っていることを教えたりして、みんないつのまにか親より詳しくなっているんです」。
 運営は清水さん個人が行っているが、先生役や協力者の顔ぶれは回によって変わる。時間を見つけては県内各地の催しに参加し、そこで繋がった人脈が活かされている。どんな空間になるかは、そのときの参加者次第。時間の流れも、決まりごともその都度違うという。
 「最終的にはこの学校を地域内外の人々が集まれるような場所にできたらいい。まずはちょっと窓を開けるくらいの基盤作りができたらいい」。そう語る清水さんは、気負うことなくごく自然体。家庭、仕事、活動と、今ちょうどいいバランスがとれているという。「切り替えはできているつもり。子どもたちは『ママようがんばりよるね』なんて言うんですよ」と笑う。女性たちに「想いがあるなら、まずは踏み出しましょう。半歩でも指1本分でもいいから」とメッセージを贈る。清水さんの一歩は、着実に前へ前へと進んでいる。                                                           (2013年7月取材)

コラム

好きな作家は

 「自分が好きな本を紹介しあい、お互いに貸し借りをするブックトレードは、自分と感覚が似てる人に会えるから面白い」。そんな清水さんが好きな絵本作家は、荒井良二さん。何気ない日常が描かれた中に心打たれるものがあるという。特に東日本大震災の後に出版された「あさになったのでまどをあけますよ」は特にお気に入りの1冊

プロフィール

北九州市出身。高校を卒業後、専門学校に進学し、臨床工学技士の資格を取得。その後病院に勤務し、25歳で結婚、2児の母に。2010年、校区の若宮南小学校が若宮小と統合し廃校になったことから、学校の再利用を検討。2011年の「お話し会」を皮切りに、「みどりのくうかん」の活動を始める。

 

 

 

 


 

 

 

 

キーワード

【さ】 【NPO・ボランティア】

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