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富安 節子(とみやすせつこ)さん (2013年8月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

社会福祉法人福岡県社会福祉協議会 常務理事 (取材時)

秘訣はサポーターを見つけること

 「女子は民間企業では就職先がないので、公務員試験を受けてください」。大学3年のとき、学生課が開いた就職説明会でそう言われ、初めて男女差別を実感した。約40年たった今でも記憶は鮮明だ。限られた就職先として選択したのは福岡県庁だったが、様々な分野の行政を経験し、最後は福岡県庁2人目の女性部長を務めた。育児休業制度もない時代に娘2人を育てる苦労は大きかったが、サポーターと励まし合える仲間の存在で乗り越えた。

困難な経験は後で役に立つ

 2008年、福岡県庁は大々的な組織再編を行った。目玉の一つが、NPOやボランティアと協働した地域づくりに取り組む「新社会推進部」。その初代部長に抜擢されたのが富安さんだった。「扱うテーマは男女共同参画から暴力団対策までと幅広かったんですが、それまでの経験を生かせました」。 
 女性の就労問題、青少年アンビシャス運動、男女共同参画、県民文化の推進、消費者問題やNPOとの協働など多様な課題にかかわった。業務に慣れたと思ったら異動。その繰り返しで慌ただしかった。地域住民や民間企業の人と一緒に仕事をする機会が多く、それが“財産”になった。「行政、民間、NPOなど、それぞれの持ち味を生かし、一緒に何かを作り上げてきた経験が、そこで役立った。現職の県社会福祉協議会でも、地域住民と連携して、誰もが安心して暮せる元気な地域社会づくりに取り組んでいくという思いは同じです」。
 今振り返ってこう語る。「常に目前のことに懸命でしたが、『困難な経験は後で役に立つ』という言葉は本当だなあと思いますよ」。

子育ては、周囲に支えられて乗り越えた

 長女を出産した1980年は、育児休業制度も、0歳児を預かる民間の保育園もなかった。当時は県庁のすぐ近くに0歳児から受け入れる県庁託児室があったので、そこに子どもを預けて、当時の職場があった福岡市東区まで通った。3年後に生まれた次女のときは、民間保育園が生後3か月から預かるようになっていたため、産前休を2週間に減らし、産後3か月休む方法で乗り切った。
 「でも、子どもは仕事が忙しいときに限って発病するんですよね」と苦笑する。県庁の後輩女性職員達によく経験談を話したのは「4点確保」。子どもが発病した場合の預け先のことだが、①保育所は病気の時には預かってくれないし、②夫が休めない時もあるので、③親や④妹にも預けていた。「自分が休めない時に頼れる先すなわちサポーターを普段から見つけておくことは、今働いている方にも必要な心構えでしょうね」。
 長女が小学6年になるころ、係長に昇進。役職に就くと、議会や予算編成の時期などは帰宅が深夜1時、2時になるが、「朝食を作るときに夕食まで作って出勤するといい」など、先輩の女性職員の助言に励まされ、乗り越えたという。

子育て期はトータルで100%

 仕事でも「自分ができない分野は、専門家にやってもらう」というスタンスの富安さん。市町村の失業対策事業費で総額300億円を下一桁まで算出する担当だったときは、OA研修の講師に頼んで計算プログラムを作ってもらい、手計算で3日かかる仕事が30分で済むようになった。「いくら努力してもできない分野は、専門家に頼む。できる人を見つけて働く気にさせるのも能力のうち。一生懸命やっていたら、きっと助けてくれる人が出てきます」。
 ワーク・ライフ・バランスとは、富安さんにとっては、仕事と育児を常に50:50にすることではない。割合はライフステージごとに変わってくる。子育てに重きを置く時期があってもいいし、仕事に専念しなければならない時期もある。「私は『子育て期はトータルで100%しかやれません』とよく言っていた。子育て中は定時退社だが、仕事がどうしても溜まるならば、都合をつけて週のうち1日だけは残業するなど、1週間単位で考えるのもお薦めですよ」。
 もう一つ、女性に伝えたいメッセージがある。「新しいことにチャレンジする勇気を持ってほしい。管理職のオファーがあったら、後進のためにも断らないでほしい。まだ数少ないチャンスだから」。現在、結婚、出産した娘2人が「40年近くも勤めているなんてすごいね」と言ってくれるのが嬉しい。社会がもっとワーク・ライフ・バランスを推進できるよう、県社会福祉協議会の常務理事として応援していくつもりだ。
                                                                                                      (2013年8月取材)

コラム

孫との至福の時間

 東京在住の長女の子どもで、女児7歳と男児4歳の二人の孫にはたまにしか会えないが、会うと自分が想定している以上に大人びた会話をする。そのギャップがおもしろいとのこと。また、福岡市内に住む次女の子どもで、5か月になる男の子。「自分の子育てのときは帰宅して、ご飯、お風呂、寝かせるだけで精一杯だったけど、孫は月齢ごとの成長にすごく驚かされるんですよー」。わずか5か月にして、「おばあちゃんなら言うことを聞いてくれる」と分かったように、母親向けの態度とは違う様子で抱っこや散歩をせがんでくるとのこと。「娘達はいろいろ大変そうですが、私は孫との触れ合いを本当に楽しませてもらっています」。

プロフィール

福岡市出身。九州大学法学部を卒業後、1973年福岡県職員に。その後、北筑前福祉事務所などを経て、労働部労働福祉課女性労働係長、総務部厚生課参事補佐、生活労働部青少年課青少年アンビシャス運動推進室長、生活労働部男女共同参画推進課長、生活労働部次長を歴任し、2008年4月に新社会推進部長。2011年3月に福岡県を退職し、同年6月、社会福祉法人福岡県社会福祉協議会常務理事に就任。2015年3月退任。

 

 

 

 


 

 

 

 

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