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小湊 真美(こみなとまみ)さん (2013年4月取材)

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西日本シティ銀行 広報文化部長 (取材時:太宰府支店長)

県内の銀行で活躍する女性支店長

 福岡の観光名所、太宰府天満宮の参道入り口にある、西日本シティ銀行太宰府支店。応接室に現れたのは支店長の小湊真美さん。約200の支店がある中で女性支店長は4人。そのうちの1人だ(2013年5月現在)。お茶と一緒にすすめられたのは、「太宰府名物の梅ヶ枝餅」。話を聞くうちに、そのもてなしに込められた「地域の特性を経営に活かしたい」との思いを知ることに。大手企業で男性と肩を並べ重責を担う小湊さんの素顔をのぞいた。

男女の壁を感じながらも

 社会科の教師を目指していた小湊さん。福岡シティ銀行(当時)の就職内定を辞退するつもりで大学の就職課に足を運んだが、そこで掛けられた言葉が運命を左右することに。「銀行くらい生きた社会を勉強できるところはないでしょう、まずは銀行にいきなさい」。
 男女雇用機会均等法が施行されて間もない1990年、同行に総合職として入社した女性は、男性約120名に対し、わずか18名だった。新入社員研修を終え配属されたのは福岡市内の箱崎支店。男性の新入社員と同じように融資係になったが、「女のくせに務まるのか」「どうせすぐ辞めるんだろう」といった空気を感じていたという。他の支店に配属された同期の女性のうち半数は約1年で退職。「やっぱり銀行員では仕事のやりがいを感じない。辞めて教師になろう」。そう思った時期もあったが、当時、働きながら教員採用試験を受けることは不可能だった。
 その頃、箱崎地区は駅の移転に伴う土地開発が進んでおり、会社の移転や家の建替などで窓口を訪れるお客さまが多かった。最初は聞かれたことに答えられなかったり、説明が足りず怒らせたこともあったという小湊さん。だが、親身に相談業務にあたるうちに、やりがいや仕事の楽しさを見出すように。「住宅ローンを融資したお客さまから、『家を建てることは一世一代のイベント。あなたに相談してよかった』『資金計画や返済計画、融資の段取りまで親切な対応をしてくれてありがとう』などと喜ばれ、自分が社会のために役立っていると実感しました」。

きめ細やかな気遣いと仕事への厳しさと

 小湊さんが、入行当初から心掛けていたのは、きめ細かなサービスだった。たとえば、定期預金を預けてくれたお客さまに自筆でお礼状を書いたり、3ヵ月に1度、電話をかけて「お元気ですか?」と声をかけたりしていた。当時はパソコンも普及しておらず、窓口の貸付業務を担当しながら膨大な数の客一人一人に手紙を書いたりすることにはかなりの労力を要した。だが、その小さな心遣いの積み重ねが、営業目標の達成や全店ランキングの上位者につながった。
 「男性が100%やるのなら、自分は180%やろう」。そのやる気と実績が認められ、女性には判断が難しいと思われていた、企業に対して資金を貸し出す「プロパー融資」の仕事も任されるように。「これを完璧にやったら、何か次の道が開けるかもしれない」。小湊さんは全力で仕事に取り組んだ。
 同期の男性が27、8歳で主任になっていく中、「自分も30歳までに主任になる」と志した頃には、教師への思いは消え、銀行で頑張っていこうという明確な意志が芽生えていた。31歳で主任の肩書を得てからは、あとに続く女性たちのことも考えるようにもなった。時には周囲から心ない雑音も聞こえてきたが、行く先々で認めてくれる上司や先輩、そしてお客さまに恵まれたという。「元々愚痴は言わない方。それぞれ考え方、生き方が違うのだから、自分の意志や考え方を貫いた方がいいでしょう」と真っ直ぐな瞳で語る。

地域との関わりを大事に

 2011年から太宰府支店長として支店の運営管理のすべてを取り仕切る小湊さん。支店内の業務だけでなく、地域に目を向け人々の声に耳を傾ける。「市の会合にも積極的に参加しています。地域と密着すること、大宰府と参道を訪れるお客様とのパイプ役になることが、私の支店長としての最大の役割だと思っていますから」。小湊さんが地域の人々のニーズを実現したものの一つに「韓国語・中国語&文化セミナー」がある。外国人観光客にもお土産を買ってほしいという参道の店主らの声を聞き、接客に必要な会話を覚えてもらおうと企画したものだ。参道で自らビラを配り、支店の2階で開催した。セミナーには、店主だけでなく天満宮の関係者や市の職員など、定員30人に対して約2倍の人が集まったという。「地域の中で当行の存在を示していきたい。すぐに営業実績につながらなくてもいいんです。のちのちお客様が当行を選んでくだされば」。かつて貸付係として窓口でお客さまと接し、心と心でつながって得た経験が、小湊さんを力強く支えている。

10年後は多くの女性支店長を

 「10年後は、女性支店長が全支店の半分、そういう銀行・社会になっていたらいいなと思います。仕事の能力だけを考えると、男性にできて女性にできないということはないと思うんです。個人レベルでは男女共に意識改革が、企業側は女性もキャリアアップしていける制度を整えていく必要があります」と課題を口にする。仕事一筋でがむしゃらに上を目指す人、仕事と家庭を両立させながら長く働く人など、いろんな生き方があっていいという。まずは自分がどうなりたいのか、仕事とどう向かい合うのか、何を目指すかなど目標をしっかり考えてほしいと話す。今やロールモデルの1人として多くの女性から目標とされている。10年後を見据えて、小湊さんの挑戦はまだまだ続く。
                                   (2013年4月取材)                            

コラム

夫との世界一周船旅の夢

 「ちょうどお互いのタイミングが合って」と、2012年に結婚した小湊さん。「夫は家事にも協力的ですし、お互いの仕事の話を聞き合うのも新鮮です」と、良きパートナーシップがうかがえる話も。忙しい毎日を送りながらも、週末は二人で趣味のサルサを楽しむなど、夫と過ごす時間を大事にしている。「退職したら夫婦で世界一周の船旅をしたい」と夢を語る柔らかな笑顔が印象的だった。

プロフィール

福岡市出身。西南学院大学商学部を卒業後1990年に旧福岡シティ銀行に入行。箱崎支店、本店営業部、西新町支店などを経て2011年5月に太宰府支店の支店長に。西日本シティ銀行では3人目の女性支店長となった。2014年5月長住支店長を経て、2015年5月広報文化部長に就任。
また、2010年から1年間、九州アジア経営塾(KAIL)でリーダーシップ論などを学んだ。

 

 

 

 


 

 

 

 

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