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市原 雅子(いちはらまさこ)さん  (2012年12月取材)

【ロールモデル】
ロールモデルとは

NPO法人こどもネットワーク“COCO田川” 代表

子どもたちの希望をカタチにする企画づくりに尽力

 「音楽が好き、子どもが好き、それが私の活動の原点です」。にこやかに話す市原雅子さんは、NPO法人こどもネットワーク“COCO田川”の代表。長年の読み聞かせ活動や、合唱などで磨かれた声はとても伸びやかだ。地元田川市で仲間とともに、「子どもまつり」や出前講座、あそび塾など、子どものための遊びや学びの場を企画・運営している。

子どもの居場所を残したい

 「音楽が好きなのは、いつも台所で歌を口ずさんでいた母の影響」と声を弾ませる市原さん。中学時代から今まで、クラブ活動やサークル活動などで、ずっと音楽に関わってきた。夫とは労音(勤労者音楽協議会)の活動で知り合い結婚。出産までの約8年半は、図書館の司書補として小学校に勤務した。3人目の子どもを妊娠中、「田川子ども劇場」が発足すると、即入会。本物の舞台芸術に触れ、遊びやワークショップなどの様々な体験を通して子どもと大人がともに育ちあえる地域をつくっていこうという「子ども劇場」の主旨が、市原さんの想いと合致したのだ。ほどなくして副代表、筑豊の運営委員長に就任、4人の子育てをしながら25年間、季刊誌作りや読み聞かせ活動に力を注いだ。だが、全盛時には1,000人以上いた会員が時代の流れで減っていき、ついに100人を割った時、やむなく「田川子ども劇場」を解散することに。みんなで子育てをする楽しさを味わい、子どもたちからエネルギーをもらったという市原さんは、「このまま子どもの居場所を確保したい。これまでのように外部から劇団を呼べなくても、日常的な活動で何かができるはず。私達には25年間のノウハウがあるのだから」と意を決し有志を募った。そうして、2000年に27人のメンバーで「こどもネットワーク“COCO田川”」を設立、翌年NPO法人として福岡県の認証を受けた。

仲間や行政と手を取り合って

 「特定非営利活動促進法」は1998年に施行された。当時、NPOについてはわからないことが多く、仲間とともに法人格取得のために2年間勉強した。「NPO法人に認証されたら何かが動き出すのでは?と期待に胸膨らませたが、結局、自分たちが企画を出していかなければ、何も始まらないことがわかった」と振り返る。子どもに遊びや学びの場を提供する活動をコツコツ続けるうち、独立行政法人や文部科学省の委託を受けて、「よっちょいで」や「子どもまつり」などのイベントを開催することに。今では、「子どもまつり」は年2回の恒例イベントとなり好評を博している。その中のワークショップで講師を務めた人々に呼び掛けて出来た「知恵と技の会」には、そば打ち名人、木工の達人、料理の先生、絵手紙の専門家と、“地元の知恵者”が顔を並べる。市原さん自身も長年の読み聞かせ経験者として参加。ほかにも、海水浴やいもほりなどの「遊びや体験」、勾玉作りをはじめとする「ものづくり」、ドラマスクールなどの「表現活動」と、年間を通じてさまざまな催しを企画・開催している。子どもたちが喜ぶ姿はもちろんだが、「企画する楽しさと、何もないところから作り上げていく面白さ」にも魅力を感じるという。

苦悩の日々を経て、大きな夢へと

 「好きなことを続けてきただけ」と、笑顔で話す市原さんだが、重い苦悩を抱えた時期もあった。末の息子が中学時代に不登校になったのだ。言葉を尽くして自分の気持ちを伝えたり、家で一緒に勉強をしたりと、必死に努力を続ける市原さんに対し、息子は壁を叩きながら大声で叫んだ。「僕の気持ちがわかっていない」と。「苦しかった。多くの子どもたちのためにと活動し、息子も一緒に参加してきたのになぜ…とやるせない思いでいっぱいだった。でもそこで活動をやめたら自分の平衡感覚が保てなくなる気がした」と打ち明ける。市原さんは、息子を約3年間フリースクールに送迎しながら、自らの活動も続けた。「時には息子を活動の場に連れて行くこともあったが、そこには黙ってついてきた」という。こうして息子は次第に立ち直っていった。「きっと似たようなことで悩んでいる家庭もある。“COCO田川”が、子どもが苦しみから抜け出したり、お母さんが希望を見い出したりできる場になればいい」と想いを語る。
 「今の子どもたちは、もっと自分のことを話したい、聞いてほしいと思っている。でも “自分の言葉”を持てなくなってきている気がして」と、危機感を募らせる市原さんは、週に1回小学校に出向き、読み聞かせや朗読を続けている。「優れた本の中には、洗練された言葉がある、それを声に出すことが言葉を育てることへつながる」と。
 市原さんは、「景色の良いところに、子ども達と高齢の方々が一同に集い、子ども達が安心して自分のことを話せる場所をつくりたい」と夢を語る。さらに、現在はボランティアで運営されている“COCO田川”を、仕事として成り立つようにしたいと願っている。「スタッフには、ボランティアではなく仕事としてのやりがいと喜びを持って働いてもらいたい」。市原さんの声に一層力がこもった。                                           

                                                                                              (2012年12月取材)

コラム

趣味のシャンソンで全国大会にも出場

 14年間、趣味でシャンソンのグループに参加している市原さん。「シャンソンは私の元気の源です」と瞳を輝かせる。2012年6月には、神戸で開催された全国大会に九州代表として出場した。「入賞は果たせませんでしたが、代表に選ばれただけで幸せでした」と話す。「これまで活動も趣味も続けてこられたのは、私と同じように音楽好きで常に同じ方向へと歩いてきた夫のおかげ」と感謝する。

プロフィール

田川市出身。昭和17年生まれ。20歳の頃から労音(勤労者音楽協議会)の活動に参加する。約8年半、小学校の図書館司書補として勤務。35歳で「田川子ども劇場」に入会し、25年間の活動の中で運営委員長も務めた。在任中の1997年に「子ども劇場福岡県センター」は福岡県民文化賞を受賞。2000年、こどもネットワーク“COCO田川”を設立し、翌年NPO法人として認証を受ける。以後、子どもたちの豊かな成長を支える環境作りを目指して、イベント等を企画・運営している。現在会員約200人。年会費大人1,000円、子ども300円。

 

 

 

 


 

 

 

 

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