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講師情報
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星野村農産加工施設「星の里」組合長 ふみちゃんのみそ汁屋 手作り工房「ふみこ」主宰
鳥の声さえずる風光明媚な八女市星野村。この地に生まれ、この地で育ち、そしてこの地で人生を過ごしながら、農産加工品のヒット商品を作っている女性、後藤富美子さんがいる。
彼女の名刺には肩書きがズラリ! “手作り工房「ふみこ」”“星野村農産加工施設組合長”“星野中学校評議員”“おばしゃんの店「清流」”“JA女性部員”、最近は民泊もスタートするなど、彼女の活動は幅広い。そしてそんな活動を続けてきた結果、平成23年度食アメニティコンテストで農林水産省農村振興局長賞を受賞し、表彰された。
しかし、その原点は「兼業農家の主婦」。平成元年に国の減反政策の一環として、米以外の収入を増やすべく、村に農産加工施設ができたことをきっかけに彼女の人生は大きな転機を迎える。地域の農家が集まってグループを作り、農産加工品を作り始め、そこで味噌作りへの挑戦が始まる。福岡県八女普及指導センターからの支援もあり、試行錯誤の後、徐々においしい味噌ができるようになるが、当時村は高速道路沿いに植える苗木の生産に沸き、「花木(かぼく)御殿が建つ」と言われるほど。徐々に仲間が花木生産で忙しくなる中、後藤さんは、たったひとりだけが味噌作りに残ることになる。
「不思議と花木をやろうとは思いませんでした。せっかく施設があるのに“もったいない”。米がたくさんとれて“くず米(※選別時にふるいから落ちた小粒米)”も豊富で、おいしい味噌ができるのに“もったいない”」(後藤さん)。この“もったいない精神”と、味噌を食べてくれた人の「おいしかったよ」「味噌汁飲まない我が子が、この味噌を使ったら飲んでくれた」という声が、後藤さんの味噌作りへの決意を揺るぎないものにした。
生産が順調になると、今度は売る場所が必要に。ちょうど当時、村に観光で訪れる人が増えたこともあり、直売所「おばしゃんの店 清流」を中心に販売をスタート。味噌のほか、お弁当、農産加工品などを持ち寄るようになった。そして、後藤さんが作った味噌は村で開催された加工品コンクールで高い評価を受け、「星野」という村の名前の使用を許され、「星野味噌」という名の味噌が誕生したのだ。
もちろん、すべてが順調だったわけではない。村での人間関係、大病を患ったりと、心が折れたことも何度となくあった。しかし、「つらい時は、今、自分は勉強させてもらってるんだと思うようにしています。そして何より続けること。やめてしまうのは簡単。いろいろあっても、絶対最後はいいことが必ず待っている!そう信じています。病気して本当は右に麻痺が残ってもおかしくなかった。今、回復したのは、これからもがんばって地域に貢献しなさい、と神様が天命をくれたおかげと思っています」。
後藤さんをよく知る方に話を聞くと、後藤さんは勉強家、そして一度会ったら皆お友達!というくらいの明るい性格なのだとか。マイナスをプラスに変える、そんな心の持ちようが、彼女の人生を明るく導いている。そんな彼女のもと、現在は、加工施設「星の里」の組合員も60名以上に!福岡県産業デザイン賞優秀賞を受賞した乾燥野菜「ほしのほしやさい」の生産に力を合わせ、元気に取り組んでいる。彼女の村への思いはひとり、またひとりと伝わり、今、大きな力となったのだ。
最後に星野村の魅力について聞いてみた。
「星野村は、夜は星が輝いて、昼はおばちゃんたちが輝く村、なんですよ。女性もがんばらないと!」。そう、年齢を重ねても女性たちがイキイキと笑顔で働く…、後藤さんの笑顔に男女共同参画の基本を見たような気がした。
(2012年5月取材)
「自宅で郷土料理の体験工房をはじめたら、人が来て、ごはんも食べたいというから、食事処をはじめたんです。そしたらゆっくり泊まりたいと言われるから、民泊をはじめて…。人との出会いを大切に、自然の流れに逆らわずにいろんなことに取り組んできました。これからもやりたいことはたくさん!あれもやりたい、これもやりたい!と尽きません」。新しい商品の試作などにも取り組む後藤さん。「病院に行く日だけが休みです(笑)」。
八女市星野村出身。星野村農産加工施設「星の里」組合長。加工品や郷土料理の試作研究、農産加工体験、郷土料理体験などができる手作り工房「ふみこ」、食事処「ふみちゃんの味噌汁屋さん」を自宅にて営む。2012年5月からは農家民泊もスタート。後藤さんらが手がけた乾燥野菜「ほしのほしやさい」は2011年、第13回福岡県産業デザイン賞優秀賞を受賞。2012年3月にはその活動が評価され、食アメニティコンテストで農林水産省農村振興局長賞を受賞した。
キーワード
【か】 【起業】 【農林水産】