【ロールモデル】
ロールモデルとは
株式会社ティーツーイー 代表取締役
地元福岡の競売不動産の情報をデータベース化し、不動産業者や投資・金融関係者に提供している株式会社ティーツーイー。2000年(平成12年)、26歳の若さで起業した代表取締役のサーズ恵美子さんだが、はじめから特に明確な起業目的があったわけではなかった。当時は、福岡でもインターネットが普及し始めた頃。競争せずに力を発揮できる場所が狙い目と考えていたため、まだ知っている人が少ないインターネットを使おうと思い立った。元々建設会社や不動産会社に勤務していた経験から、業界の仕組みやニーズも分かる。会社を興す直前に不動産の本場アメリカを視察し、この2つを組み合わせることで新しいビジネスが成立するのではと感じた。
「『人から必要とされる存在でいたい』が人生の大コンセプト。何事も1人ではできないので、必要な時に周りから声をかけてもらえるようになりたい。そのためには、まずは自分で実際に見て市場や状況を理解しなければ。他の人がフィルタリングした情報だけでは足りないと思います」。
常にアンテナを張りめぐらせ、面白い情報がないか探しているサーズさん。2003年(平成15年)には、注目され始めた不動産金融工学やREIT(不動産投資信託)について調べるため、アメリカ東海岸へ飛ぶなど、“思い立ったら行動あるのみ”だ。未知の世界に対する不安や恐怖はないのか?と問われるたびに、「知らないままの方が怖い」と断言する。
「若い頃はお金も経験も乏しいから、何かやるにも発想が限られて大したことは思いつけないけれど、起業やお金の借り方を知れば可能性がグンと広がる。選択肢が多いほど豊かな人生を送れると思っているので、『これしかできないから』じゃなく『たくさんある中から選んでこれなのよ』と言いたい。選択肢を増やしたければ、もっと調べたり勉強したりする。その時に能力も開けるんです」。
2007年(平成19年)からは九州産業大学商学部で非常勤講師として教壇に立ち、また夫のニック氏が社長を務める有限会社フクオカ・ナウではマネージャーとして、外国人居住者・観光客向けの情報誌「FUKUOKA NOW」の制作にも携わっている。望まれる時に望まれることを、必要に応じてバランスよく行っているサーズさんからは、何でも受け入れる柔軟性と生き生きとしたオープンマインドが感じられる。
「若い人は受け身がちで、周りの目を気にする人が多いように思います。でも、例えば、隣の人間がどんなに楽しく愉快な人かも分からないんだから、躊躇するまでもなく、相手を知り仲良くなっておきなさいよと、小突いています。ビジネスも同じ。いつ成功するかは分からないけれど、自分がそのためのお手伝いができるかもしれないのだから、縁あって来てくれた人にはできるだけのことをしたい。偉いとか大きいとか関係なく、ヒトとして付き合えるかを大切にしています。信頼関係がある人と一緒にものごとを進めるのは、楽しさや充実感が全然違いますから」。
今後も自分が主役ではなく、“伝えていくこと”“人の扉を開けること”に力を入れたいというサーズさん。今はまだ漠然と形を探しながら、アンテナに何かが引っかかるタイミングを待っている。
(2011年2月取材)
サーズさんの気晴らしは大型バイクでのツーリング。以前は1200ccのマシンを駆っていたが、「さすがに街乗りに向いていないので」と現在は750cc。時には阿蘇や四国まで遠出をすることもあるそうだ。趣味でもある人との関わりは、フクオカ・ナウで毎回700~800人の集客を誇るパーティーに発展し、年に5回程度イベントを企画して開催に携わっている。裏方に徹しながら、多くの人にコミュニケーションの場を提供している。
福岡県生まれ。福岡大学法学部卒。2000(平成12)年に株式会社ティーツーイーを設立。「T2e競売不動産情報」「売主物件専門サイト 売リボウズ」など画期的な自社サイトを運営するほか、数多くのWEBサイトの企画から運営代行までを手掛ける。2006(平成18)年、第5回女性起業家大賞特別賞を受賞。2007(平成19)年から九州産業大学商学部非常勤講師として「eコマース実践論」を担当。夫が社長を務める有限会社フクオカ・ナウにもマネージャーとして携わっている。
キーワード
【さ】 【働く・キャリアアップ】 【起業】 【国際・まちづくり】