私は子ども2人の保育園の送迎を担い、今も夕食作りを担当しています。出産は女性にしかできないけれど、子育ては男性でもできます。社会的性差(ジェンダー)、つまり私たちが「男だから・女だからこうしないと」と思っていることの大半は生物学的に決まっていることではなく、人が考えたことに過ぎない。ですから、社会的性差は、人と人が相談して変えていくことができるのです。
日本では少子高齢化が進んでいます。働く人が減るため、みんなが働く社会を作る必要があります。考えられる働き手は、専業主婦と高齢者です。国のある調査によると、高齢者が働いている割合が高い都道府県ほど、高齢者一人あたりの医療費が低いという傾向がみられます。また専業主婦に関しては、結婚の不安定さの問題を考えなければなりません。日本では19年連続、離婚率が3割を超えています。結婚したら何とかなるという発想では、これからの時代は生きていけません。
私が最も問題視しているのは、男性の家事・育児時間が少なすぎることです。共働き世帯の家事関連時間の1日平均は、妻4時間53分に対して夫39分。これは社会的に問題にすべき水準です。雇用主は人を雇うとき、女性にのみ家事育児のコストを加算する。その結果、男性ばかりが雇われ、夜中まで働かされて、少子化という現象を生んでいます。このような状況では、会社は一時的に続いたとしても、社会が持続的に続いていかないのです。今の日本は、人が普通に働いて普通に子育てするのが非常に難しい社会になっています。雇用主は、男性と女性のどちらを雇っても家事育児・介護がついてくるという認識を持たなければなりません。男性の日常の働き方から見直し、積極的に家事や育児の時間を取れるような社会にならない限り、少子化の問題は解決できません。
夫だけが働く一頭立て馬車体制は、給与がどんどん上がった高度成長期の遺物です。とはいえ、現在、第一子の出産後に働き続けている正社員の女性は、25%ほどしかいません。女性が出産後も正社員にとどまっていれば、のちの30年で1~2億円稼ぐことができます。30代で年収350万円としても、30年で1億円を超えます。ジャンボ宝くじが当たったような金額ですね。
ただし、共働きで妻だけが家事育児を担うと、過労で倒れてしまいます。たとえ夫の給与が低くても、夫も家事育児をしっかり担っているほうが、家庭として安定します。先ほど紹介したデータで、共働き世帯の家事関連時間は、夫と妻を足すと5時間半ほどでした。それならば、夫と妻がともに1日2~3時間家事をすれば、今と同程度の家事量になるわけです。仮に夫が1日2時間家事をすれば、妻は外で年350万円稼ぐとしましょう。2時間×1年350日ほどを350万円で割ると、夫の家事の時給は5,000円。これは夫自身の残業代の時給より高い。妻が正社員として働き続け、夫が残業を断って早く家に帰り、家事育児を2~3時間やるほうが、家計でみてもはるかに合理的なのです。
過労の先には、自殺があります。自殺は男性のほうが圧倒的に多く、男女比7:3です。日本は世界的に見て自殺が多く、交通事故の5倍以上にのぼります。男性が大黒柱である時代は終わりました。夫が2~3時間家事育児をすることで、妻の正社員就労を支えれば、お互いの過労を防げる。男性の家事は、自分自身の命を救うことにもつながるのです。さらに、もし自分が働けなくなっても家計は回る状態になることで、男性は肩の荷が軽くなるでしょう。
1991年から「男女共同参画」という用語が使われるようになりました。しかし、日本社会は国際的には後進国です。今ある男性社会の秩序の中に女性が入っていくのではなく、新しい働き方、生き方を考えて新しい社会を構築していきましょう。
タイトル | 笑って考える少子高齢社会~男の家事が社会を救う |
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開催日時 | 2017年7月15日(土) |