ふくおか女性いきいき塾　④地域活性化

立教大学大学院２１世紀社会デザイン研究所教授萩原なつ子さんに、地域活性化についての講義をしていただきました。

　今年の内閣府の男女共同参画のキャッチフレーズは、「地域力×女性力＝無限大の未来」です。地域活性化には「ばか者」「若者」「よそ者」とよく言われますが、私は、プラス「女性」だと思っていて、女性が元気なところは地域も元気です。地域活性化には社会的な課題やニーズの多様化に伴い、地域の多様な主体が連携・協力しあって課題の解決に取り組む「共助社会」が重要です。具体的には行政、市民団体、企業、自治会、様々な主体が連携しながら地域の課題を解決していく時代です。そしてこの共助社会を形成するための鍵が、市民協働と男女共同参画なのです。「協働とは、『異種、異質の組織』が『共通の社会的な目的』を果たすために、『それぞれのリソース（資源や特性）を持ち寄り、『対等な立場』で『協力して共に働く』ことです。現在パブリックコメントを募集中（H27.7.29～9.14）の「第４次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」でも、多様な社会的課題解決に向けて、男性型社会の変革と女性の活躍推進に向けた社会づくりの加速化が掲げられており、男女共同参画での地域づくり（地方創生）が言われています。地方創生の鍵は、内発的な女性の声や女性の視点を活かすことであり、それらを政策、施策に反映する仕組みをつくるなど、今後ますます男女共同参画の推進や男女平等政策の充実が必要です。
　内発的な女性の声を活かした事例として、東京都豊島区の事例を紹介したいと思います。平成26年5月に日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」で、豊島区は東京23区で唯一「消滅可能性都市」とされました。その要因は20～39歳の女性の転入が大幅に減るという予測で、衝撃を受けた区は、「女性にやさしいまちづくりは、誰にとってもやさしいまち」をキャッチフレーズに当事者の女性たちの声を反映し、女性が住みたくなる区にしようと、8月に「としまF1会議」を設置しました。私は座長としてかかわりました。その際こだわったのが、会議のプロセスデザインです。会議のメンバーは、自発的、主体的に参画してくれる人、議論するテーマはメンバーが決定すること、調査、研究をもとにした裏付け・実効性のあるプランの提案を目指すこと、区の職員もメンバーとして参加することなどです。キックオフイベントとして開催した「としま100人女子会」で、多くの意見やアイデアが出され会議の方向性が見えてきました。6チームに分かれ具体的な施策案を検討し、12月に報告書を提出しました。F1世代（20～34歳の女性）は多様な存在であるという認識をベースに、当事者目線でユニークかつ説得力のある提案が数多くなされ、区の担当者も参加し議論し意見交換することで、市民参画、協働型の会議となりました。重要なことは、それぞれの提案が、行政だけではなく、住民や事業者もともに「住みやすい、暮らしやすい豊島」を創る担い手、主体であるという前提に立ってなされたことです。その結果、27年度予算に「子育てナビゲーターの配置」等11事業、8、800万円が計上され事業化されました。更に、会議を通して、地域にある資源（得意分野）を持っている企業、組織、人をつなげていくことが可能になり、新しい連携が生まれています。今後は、当事者目線の提案を発信するための仕組みの継続や、参加者のモチベーションの持続が非常に重要です。
　地域と人を育むネットワークのキーワードは、「ゆるやかなネットワーク」と「ノットワーキング（結び目を作る）」で、課題ごとに結び目をつくり、その課題が、解決したら結び目をほどくので、「むすんでひらいて」の方式です。結び目をつくるために大切なことは、日頃からゆるやかなネットワークを個人や組織が持つことです。固い絆ではなく、むしろゆるやかなつながりが力となることがあり、それは弱さの強さと言われています。みなさんにはいきいき塾を通して、異種、異質の方たちとゆるやかなつながりをつくっていただきたいと思います。そして対話を通して自分たちの持っているアイデアを形にしていくプロセスデザインを大事にして、福岡を、九州を、そして日本を元気にしていく原動力になっていただきたいと思っています。

【講師プロフィール】
明治学院大学及びお茶の水女子大学大学院を卒業後、財団法人トヨタ財団アソシエイト・プログラム・オフィサー、宮城県環境生活部次長、武蔵工業大学環境情報学部助教授などを歴任。環境社会学、ジェンダー、非営利活動等が専門。講演は、男女共同参画、ワークライフバランス、地域づくり、防災など多岐。