平成25年度のふくおか女性いきいき塾の最終講義となる11回目は、厚生労働省政策評価に関する有識者会議委員の渥美由喜さんをお迎えして、「両立支援」について学びました。渥美さんは国内外でワーク・ライフ・バランス(WLB)の先進企業800社をヒアリングし、企業の取組推進を支援。一方、ご自身が子育て、介護、看護に深くかかわっており、自らの経験と思いも語ってくださいました。
現在、介護している570万人の過半数は働いており、そのうち6割が40~50代で、男性が4割を占めるとのこと。少子化や非婚化、核家族化など人口構造や家族形態の変化に伴い今後、家族に要介護者がいる社員の割合は増え続け、身体的・精神的問題や仕事との両立に悩む人が急増すると予想されます。
そこでカギとなるのが、WLBです。ワークとライフは二者択一ではなく、ワークの土台がライフであり、互いに相乗効果とストレス相殺効果があるそうです。WLBの本質は、従業員のやる気を引き出しつつ、業務体制を見直すことによる、個人とチームの生産性向上。育児や介護に直面してから慌てても間に合わない、前もって働き方を見直しておくことが重要です。
WLBを推進すると、優秀な人材確保、労働意欲の向上、業務の標準化・効率化などの経営効果が現れます。ある調査によると、2007年からの5年間で、一般企業は経常利益が3割減少したのに対し、WLB先進企業は1割増大。短期的にコストが発生したとしても、中長期的にはハイリターンとして返ってくる投資なのです。また、女性管理職割合が低い企業、長時間労働の職場ほど、不祥事が生じるリスクが高いという調査結果もあります。「経営にはチェック機能が欠かせず、それには人の多面性が有効。人口減少社会においても、職業人、家庭人、地域人という一人3役の掛け算が重要です。多面性はその人を支える心のセーフティネットにもなる」と自らの体験から実感されているそうです。
「日本企業は今、大きな分岐点に立っており、WLBが企業の明暗を分けます。ダイバーシティ・WLBは経営戦略、地域戦略として不可欠。目先の業績向上に目を奪われることなく、強靭な企業体質、持続性の高い地域づくりを目指してほしい。個人にとってのWLBはリスクマネジメントであり、幸せへの道しるべになる」と力強く語られました。笑いあり、涙ありの講義に塾生は感動した様子で、「自身の介護と仕事の壁にちょうど、行き詰っていたところだったので、道が拓ける気がしました」や「良かった探し、など具体的な方法を示していただき、すぐにでも始めようと思いました」などの感想が寄せられました。
タイトル | 講義⑪「両立支援」 |
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開催日時 | 2014年1月11日(土) |