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【センター長コラム】 「女子差別撤廃条約」で変わった日本の法制度 ②  (2020年5月13日配信)

こんにちは。

今日の花は、紫蘭(シラン)とヒメヒオウギです。紫蘭は、学生時代によく聞いた歌に、お気に入りだった紫蘭の花が枯れたというような歌詞があって、どんな花だろうといつも思っていたので、この花を見ると、学生時代を思い出します。ヒメヒオウギは、こぼれた種で、どんどん増えます。

 

お変わりありませんか。

前回に引き続き、女子差別撤廃条約によってわが国の法律や制度がどのように変わったのかを見ていくことにしましょう。

 

女子差別撤廃条約は、母性保護(妊娠・出産)のための特別措置と、事実上の不平等を解消するための暫定的な特別措置以外は、すべて女性差別として禁止するもので、締約国は、女性に対する差別となっている既存の法律や規則、慣行などを修正・廃止する(立法を含む)必要がありました。

 

わが国では、①国籍法の改正、②高校の学習指導要領で女子のみ家庭科が必修としているのを男子も履修とすること、③雇用における平等の法制化、が必要でした。

 

今回は、①と②を見ることにします。

まず、国籍法ですが、大きな問題は、国際結婚をしたカップルの間に生まれた子どもの出生時の国籍でした。

 

生まれたときにどこの国の国民となるかは、親の国籍を引き継ぐ国と、親がどこの国の人であろうと、自分の国で生まれた人はすべて自分の国の国民とするという国(例えば、アメリカはこの方式です)があります。

 

日本は、親の国籍を引き継ぐ方式をとっていますが、当時は、父親が日本人の場合だけ、出生時に日本国籍を取得するとされており、外国人と結婚した女性の子どもには日本国籍は与えられませんでした。

 

これは男女不平等なので、1985年(昭和60年)に国籍法が改正され、父親か母親のどちらか一方が日本人であれば、子どもは日本国民とすることとなりました。

 

次に、高校男子の家庭科履修です。

当時の高校学習指導要領では、「男女の特性を考慮して」、女子だけに「家庭一般」という科目が必修とされていました。女子が「家庭一般」の授業を受けている時間には、男子は別の授業を受けていました。

(中学校では、「技術・家庭」の教科があり、女子は「家庭科」、男子は「技術」の授業を受けており、それも問題ですが、高校では、女子だけに必修がありました。)

 

1989年(平成1年)に高校の学習指導要領が改定され、男女とも家庭科が必修となりました。実施は1994年度(平成6年度)からなので、当時15、6歳、今40歳ぐらいの男性から、新しい制度の授業を受けています。

 

男性の皆さんと話をすると、「料理やってますよ」いう方は大体40歳以下が多いので、家庭で普通に料理をしているかどうかの境界線は、この40歳ラインのような気がします。

 

興味深いことに、もっと若い世代の人たちも、親がアラフォーの子どもと、団塊ジュニア(45歳~49歳くらい)の子どもでは、家事分担に対する意識が少し違っているような気がします。子どもは親の背中を見て育っていると思います。

 

さて、これまで、条約を批准するために必要だった当時の法制度の変更を見てきましたが、現在の日本の法制度にも条約は深く関連していることを、あと2つお話ししたいと思います。

 

1つは、女子差別撤廃条約が差別ではないとした、「事実上の不平等を解消するための暫定的な特別措置」です。

わかりにくい表現かと思いますが、これは、実際にある差別を早く解消するために、差別されているほうのグループに、一定の範囲で特別の機会を提供するというものです。

「ポジティブアクション」、「アファーマティブアクション」、「積極的改善措置」とも言われます。

 

この規定は、1999年(平成11年)に制定された、わが国の男女共同参画分野の基本的な理念を定めた「男女共同参画社会基本法」に書き込まれており(第2条)、男女共同参画分野の法律に生かされています。

 

2015年(平成27年)に制定された「女性活躍推進法」は、職業生活における活躍には男女間に格差があるという実情を踏まえて、女性に採用や昇進などの積極的な機会を提供することにしているのです。

 

 

もう1つの女子差別撤廃条約の要請は、同じ「女性活躍推進法」にも生かされているのですが、子どもの養育は女性だけが責任を負うのではなく、男女の共同責任であるということです。

 

「男女共同参画社会基本法」も、子どもの養育や家族の介護など家庭生活の責任は男女が共同で行うこととしています。

 

「女性活躍推進法」は、「女性の」職業生活における活躍なので「女性の」という言葉がたくさん出てきますが、「職業生活と家庭生活の両立」(第2条第2項)については、「男女の」職業生活と家庭生活の両立という規定になっています。

 

このように、女子差別撤廃条約は、日本の法制度に大きな影響を及ぼしました。まさに「世界女性の憲法」と言われるゆえんです。

 

終わりは、いつものように、マイ農園だよりです。

しだれ梅の実が膨らんできました。このまま落ちずに大きくなりますように、と祈っています。ベランダ菜園では、毎日15粒ほどのイチゴがとれています。パセリやサンチュと一緒に、毎日私のお弁当に入っています。

それでは今日はこの辺で。

では、また。                              (2020.05.13)

  

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