黄色のカンナが咲きました。山アジサイのピンク色はだんだん退色してきました。
芝生の中に、ネジバナの花が咲きました。ネジバナは、細い茎に小さな花々が、らせん状に巻きつくように咲きます。名前のとおり、ネジのような形状です。
さて、今回は、わが国の男女平等の法制度が大きく動くきっかけとなった夏を思い出してみようと思います。
今年は、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」が採択されて40年の節目の年にあたります。この条約は、「世界女性の憲法」と言われる条約で、世界中の国々の男女平等推進の拠りどころとなる国際規範です。わが国において、「男女雇用機会均等法」が制定されたのも、国際結婚で生まれた子どもが日本国籍を取得するのは、父親が日本人である場合に限られていたのが、男女平等に改められたのも、日本がこの条約に署名したからなのです。
今回のコラムは、その条約署名についてのドラマです。
女子差別撤廃条約は、1979年12月の国連総会で採択され、翌1980年7月17日にデンマークのコペンハーゲンで開催された「第2回世界女性会議」で署名式が行われることになりました。
日本は、条約採択のときに賛成票を投じましたが、条約に署名することには否定的でした。それは、この条約に署名すると、「女性に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること」となっていて、例えば、雇用の場における男女平等に関して、労働基準法で男女同一賃金は定められていましたが、採用や待遇の平等規定がないという問題があるなど、日本政府には、これらの解決という高いハードルは超えられないという認識があったからです。
条約を署名するにあたっての大きな障壁は、雇用における男女平等法の制定、国籍法の改正、家庭科の男女別カリキュラムの変更という3つの問題で、政府は、法律を全部きちんと整備して批准できる見通しがなければ署名はしないという方針でした。
第2回世界女性会議を目前に控えた1980年の6月は、日本の憲政史上初めての衆参同日選挙となった選挙戦の最中でした。5月に急遽、6月22日に衆参同日選挙が行われることが決定され、加えて、選挙戦のさ中に、そのときの総理大臣・大平正芳さんが亡くなるという大変な選挙でした。
そんなとき、朝日新聞が、6月7日の朝刊の1面トップに、大きな見出しをつけて、国内法改正のメドがたたないため、日本は女子差別撤廃条約の署名を見送るという記事を掲載しました。
この記事は、朝日新聞の女性の記者・松井やよりさんが書いたもので、女性たちの危機意識を目覚めさせました。選挙運動中の女性議員も、女性団体も、総理の女性問題の諮問機関であった婦人問題企画推進会議も、新聞記者も、即座に行動を起こし、署名や申し入れ、要望書の提出などを行いました。もちろん、男性の有識者も同様に行動しました。
このような動きを受けて、総理府婦人問題担当室が関係省庁間の調整を行うなどの努力を重ね、署名式直前の7月15日に、条約署名の閣議決定にこぎつけました。
7月17日の署名式では、第2回世界女性会議の日本政府代表団の首席代表をつとめた高橋展子在デンマーク特命全権大使が署名を行いました。
署名を行ったことで、懸案の3つの課題が検討され、1985年1月に改正国籍法が施行、1985年5月には男女雇用機会均等法が成立、1989年3月に学習指導要領が改定されて1994年から高校で家庭科が男女共修となりました。
39年前の夏は、女性たちの熱い思いと行動、心ある男性たちの支援によってわが国の歴史が動いたのでした。
今年は、女子差別撤廃条約採択40年の節目の年です。
今年11月23日(土)の「福岡県男女共同参画の日」に開催する「あすばるフォーラム」では、女子差別撤廃条約をテーマにした講演会を開催します。
講師は、文京学院大学名誉教授で、国際女性の地位協会会長の山下泰子さんです。
山下さんは、女子差別撤廃条約研究の第一人者であり、女子差別撤廃条約の普及のための活動も続けています。
女子差別撤廃条約はどのような条約か、わが国の男女平等政策にどのような役割を果たしたのかを学ぶとともに、私たちが次の世代に何をつないでいかなければならないのかを、皆さんと一緒に考えたいと思います。
「あすばるフォーラム」の詳細は、決まり次第、チラシやホームページでお知らせします。皆さんのご参加を心からお待ちしています。
最後に、我が家と私の、この夏のうれしい歴史を。
今年、はじめて、桃を収穫できました。「桃栗3年、柿8年」と言いますが、我が家に桃を植えてから、もう5、6年たちます。やっと食べられる桃ができました。
私の歴史的体験は、下の写真。
2016年のG7伊勢志摩サミットで各国首脳がそろって記念撮影をした展望台に行って、首脳の皆さんが立った位置で写真を撮りました。
では、また。